107 / 179
第26話 『直×拓編』
side拓己
夏休みの間、凪が予備校に通うと知って俺もこっそり申し込んだ。
何も知らせずに偶然予備校で会ったふりをして驚かせた。
「暇だから付き合ってやるよ」
「え?」
びっくりした凪の顔が見たかったんだ。
「行こうぜ」
知ったかぶりをして教室に案内した。
201…201…あった!
「俺と同じ講義とってるんだ」
「まあね」
ちょっぴり背伸びしたことは黙っていよう。
「拓己…終わったよ」
「ん?なぎ…?」
学校と違って、他のやつは真面目に講義を聞いているから俺一人寝ていても咎められない。
ふあ~とでっかい欠伸をしたらお腹が鳴った。
「腹減った」
「…ハンバーガーでいい?」
「うん、食べ行こ」
友達と外食…初めてかも…。
あ、でも凪は純粋に友達ってだけじゃない。
考えて顔が熱くなる。
ハンバーガーの乗ったトレイを持って二階席に座った。
窓に向かって座っているので上から通りがよく見える。
「いただきま~す」
「旨っ!チーズ最高!」
「ベーコンも旨い!」
俺はハンバーグとチーズがダブルで入ってるやつで、凪はベーコンと目玉焼き、ハンバーグがはいったやつにした。
コーラを美味しそうに飲んでいた凪の目線が下を向いている。
その視線の先にジーンズを履いて黒のポロシャツを着た同世代の男…。
「あれ誰?」
「同じクラスの橋本直樹」
「橋本…直樹…」
…ん…?
何だろう?
変な感じがする…。
「知り合い?」
「いや…知らない…」
橋本…直樹…。
…知らない…そんな人、本当に知らない…?
「イケメン気になる?」
ニヤニヤして聞いてくるのってどうかな。
「そういうのじゃない」
そうじゃなくて…見たことがあるような…。
オレンジジュースに手を伸ばすと今度は凪がこっちを見て、不思議そうな顔をしていた。
ともだちにシェアしよう!