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第31話 『直×拓編』

side直樹 久しぶりの外出を甘くみていた…。 真夏の日中出歩くのは控えよう。 低めの温度のシャワーを頭から浴びる。 火照る体の熱が排水口へと流れ落ちていった。 アイツ… 胡散臭いサラリーマンに引っ掛けられていたのを俺が追っ払ってやって 『助かった』 そう言った顔は俺を見て安堵していた。 『俺、拓己。オマエは?』 …そんなに簡単に個人情報出してんじゃねぇよ! 俺相手じゃなかったら何されてるかわかんないし。 シャワーの温度を目一杯下げた。 俺は何の相手をするんだ…? 冷たい水飛沫が顔を打つ。 俺はどうしたいんだ? 熱を持った体をもて余す…。 昨日あまりの暑さに挫けた買い物の続きをするため、強い意思をもって再び量販店に来た。 親父がプリンター使えるようにしておけ、とか言うから…。 必要な物をまとめて購入し、荷物を手に屋外へ出た。 暑い…。 身体中から水分が蒸発していく。 この暑さ、死ねる…。 荷物もそれなりの種類を買ったせいでずっしりと重い。 早く家に帰ろう…足を速めた。 通りから一歩脇道に入った辺りで争う声…ケンカ? 「……!」 「……なせっ…」 うん、デジャブ。 若い男と揉めている、アイツ…拓己…。 「…コイツ俺のツレなんで…」 余計なお世話かな…でも、一応… 背中に拓己を庇う。 「暇そうにしてるから誘ってやったんだ」 偉そうに適当な事を言って。 「そういうの必要ないんで、失礼します」  行くぞ、と拓己の腕を引いてさっさとその場を離れた。 繁華街から少し外れれば公園があるが…。 「…暑い」 額から滴る汗を手の甲で拭う。 「ウチに来る?」 拓己が問いかけてくる。 「ここから近いし…」 見上げてきた顔から何故か目が離せない。 「…ああ」 曖昧に答えた。

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