113 / 179

第32話 『直×拓編』

side直樹 すっきりとした部屋は案外居心地が悪いものだ。 拓己の部屋に通されたが…驚くほどきちんと整理されていて、生活感がない。 きちんと直されたベッドの端に腰かけた。 気が強そうで美人なんだけど…見た目と違い圧に弱く人がいい。 そんな拓己を可愛いと思う。 男にそんな風に思われたって嬉しくはないか。 「リンゴジュースでいいかな?炭酸無かった」 トレイにグラスを二つ乗せ、ストロー、コースターまで付けて女子か! 「えっと、拓己は中学せ…」 「高1だから」 「え…あ、同級生になるのか」 小さくて可愛いから年下かと思ってた。 「あの…ありがとう。オレ、今日みたいに声掛けられる事が最近多くて…」 「隙だらけだからな」 そんなこと無い、と拓己は言っているが、拓己には人を…というか男を惹き付けるものがあるのだと思う。 晴くんとは別人だけれど、俺に抱かれてからの晴くんのような…艶っぽさがあるというか…。 多分、拓己は男を知ってる。 そんな気がする。 付き合ってる奴がいるならそいつに守ってもらえばいい。 コップを手に取り、ストローに口を付けた。 グラスに氷がカランと当たり、結露が流れ落ちる。 「オレ、振られちゃってさ」 「えっ…」 「付き合おうとか言ってなかったけど…オレは そんなだと思ってた」 拓己、振られたのか…。 …ま、俺もだけど…。 昨日拓己と別れた後、晴くんから ゴメンってラインがきていた。 これ以上俺に隠し事はしたくない…そんな内容だった。 晴くんが悲しむことが無いのなら…それならいい。 今は 拓己が気になる。 「好きな人が出来たって…じゃあオレは?オレの事は好きじゃなかったのかよって…」 うつ向いているから泣いてるのかもしれない。 肩が小さく震えている。 こういう時は抱き締めていいのだろうか? 泣かれるとこっちも辛い。 「過ぎた事はしょうがないよ」 肩に腕を回すだけにした。 泣き顔を見られたくないかもしれないから。

ともだちにシェアしよう!