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第33話 『直×拓編』
side拓己
言わなくてもいいような事まで直樹に話した。
辛くて、忘れてしまいたいこともなぜか話さずにはいられなかった…直樹なら受け止めてくれる、そんな気がして。
肩に回された腕が暖かくて、その重みに安心する。
人見知りがちな自分が直樹になら素直になれる。
甘えたい…人肌が恋しい。
見つめる瞳に絡め取られてしまいたい。
「しょうがない、立ち直れるまで付き合うよ」
耳を疑うような言葉が直樹からもらえた。
「…迷惑じゃないの?」
「振られた者同士、仲良くやろうぜ」
信じられない言葉だった。
「振られたって、直樹が?…こんなに優しくてカッコいいのに?」
自分のように周囲と上手く接する事が出来ない人種ならともかく…優しくて気遣いが出来て…イケメンで…どんな人が直樹を振ったのか。
「俺に実力がなかっただけだ」
「どんな実力?」
思わず吹き出して笑った。
ゴメンと、形式的に謝罪したが震える肩は治まらない。
「笑いすぎ」
少し怒った声をして、でも…優しく抱き締めてくれた。
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