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第39話 『直×拓編』

side直樹 鼻を擽るシャンプーの匂い…柔らかく温かな塊を抱き直す。 「…んっ…」 …気持ちいぃ…大きな湯たんぽに寄り添って…… …? すり寄ったら、それは湯たんぽなどではなく… 「拓己か…」 俺に寄り添って眠っていた。 肌の色は青白く、美しい弧を描く眉。 頬にかかる乱れた髪も絵になる。 よく見ると目元は赤く、伏せられた長い睫毛の下に隈が出来ていた。 …あぁ、さっき泣いてたから…。 拓己の悲しみを俺はどうすることも出来ない。 そもそもその原因も知らない…。 手のひらで頬にかかる髪を後ろへ撫でた。 「…ぃかないで…」 消え入りそうな声で眠りながら誰を引き留めているのか。 指先で唇の形をなぞり下唇を押した。 「あっ」 指先に濡れた感触…。 反射的に引いた指を、もう一度唇に押し付ける。 ちゅう、と吸われぞくっと背筋が粟立った。 眠っている拓己の唇に自身のそれを押し当てると…。 柔らかい唇に触れるだけのキスを幾つかするとそれに応えるように舌で求められる。 キス…慣れてる…。 一体拓己は誰とこんな風にキスしてきたんだろう…。 背中に回した腕で拓己を抱き寄せて口付けを続けた。 …拓己…起きちゃうよね…でも…。 うっすらと瞼が開き拓己と目が合ったが…拒否されることもなく口付けはより深くなる。 「…んっ…あ…」 嬌声が唇から漏れ始めても拓己は止めない。 俺はいつの間にか拓己に馬乗りになってキスを貪っていた。

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