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第43話 『直×拓編』
side直樹
拓己を前にすると歯止めが効かない。
最初は守ってあげたいと思ったのだが今は欲しくて堪らない。
自分に足りないモノを補ってくれているような、そんな気になる。
晴くんにはここまで執着しなかったのに。
俺、こんなに独占欲が強かったっけ?
横で微睡んでいる拓己の髪を弄っているとカレンダーが目の端に入ってきた。
「拓己の誕生日…いつ?俺もうすぐなんだ」
「ん?…オレも もうすぐ。8月31日」
え…?
「すごい偶然だな…俺9月1日…」
突然ガバッと拓己が起き上がった。
「…そうなんだ!一日違いだ」
「31日に会おうよ」
「ん、いいよ」
拓己と二人で俺達の誕生日を祝う約束をした。
誕生日を誰かと祝うなんて…小さい頃は祖父母がお祝いしてくれたけど…。
友達の誕生日プレゼントを選ぶのも…ちょっとドキドキする。
拓己はイベントとかあんまり気にしないのかな。
「うちは父子家庭だから家でイベントはないよ。お正月だけ」
「直樹にはお父さんがいるのか。うちはお母さんだけだよ」
「え?」
拓己の家も片親なのか…。
だから親近感が湧くのかな。
「でも気付いた時にはこうだったから…こういうもんだと思ってる」
「そうだな」
物心ついた時にはこうだった。
だから両親揃っている感覚がわからない。
相づちを打って、拓己はきっと俺と同じなんだろうと思った。
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