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第44話 『直×拓編』
side直樹
明日は拓己の誕生日。
拓己へのプレゼントは何にしようか。
昨日も一昨日もぶらぶらと店をまわってプレゼントを探していた。
なんかこう…嬉しくなるような、いつまでも手に取っていたいような…そういった漠然とした感覚で店を見て回った。
そして繁華街大通りの端にぽつんとあった店の外観が気になって入ってみた。
ヨーロッパの古い町並みにありそうな店。
名前は…ねこのしっぽ。
レトロな趣で温かい感じがする。
「雑貨屋かな…?こんな店あったんだ」
少女がウサギを追いかける外国の絵本、バラの花を象った角砂糖、強張った笑顔のクルミ割り人形、銀のスプーン…。
少女趣味…そういった言葉が合うかどうかは確かではないが…自分には縁のない店だ。
入り口からゆっくりと眺め…店内を一周してそれを見つけた。
これだ…。
気に入ってもらえるかはわからない…でも…
「喜んでくれるといいな」
プレゼント用にリボンを掛けて包んでもらい、胸に抱えて店を出た。
「いらっしゃい」
「誕生日おめでとう。ケーキ買ってきた」
ありがとう、と言って白い箱を受け取り拓己ははにかんだ笑顔を俺に見せた。
リビングで二人きりの誕生日パーティー。
パーティーと言えるほど豪華ではないけれど、ケーキとジュースとプレゼントの三種の神器は揃っている。
「拓己、誕生日おめでとう」
「ありがとう。直樹もね!」
「俺は明日だけどな」
笑い合ってケーキのイチゴにフォークを刺す。
「直樹は好きなものは最初に食べる派?」
「うん」
ショートケーキはまず、イチゴから食べる。
「拓己は最後?」
「うん。楽しみは最後に取っておく派」
そうなんだ…でも
「油断すると盗られちゃうから最初に食べろよ」
イチゴを口に入れ、柔らかな果肉を噛み砕く。
口の端に着いたクリームを舌で舐めとり拓己を目を見る。
「それでも…最後まで取っておきたい…」
「…じゃあしょうがないな。あ、コレは俺から拓己に…プレゼント」
リボンの付いた包みを渡した。
「開けていい?」
「もちろん」
ウキウキとリボンをほどく拓己に少しドキドキした。
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