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第45話 『直×拓編』

「これ…アルバム?」 「そう。これから俺と拓己の思い出をたくさん作っていくから」 表紙は布貼りで大切な思い出を綴じるのにふさわしい優しい色合い。 粘着質の硬い厚紙に写真を貼り、上から透明シートでカバーする古いタイプの物だ。 「綺麗な色だね。オレからは…これ、開けてみてよ」 拓己から細長い包みを受けとった。 「ありがとう」 何だろう…包みを破かないようにテープを剥がし蓋を開けた。 「ブレスレット!?」 …アクセサリーか…! 「重い…かな?」 「驚いただけ。嬉しいよ、ありがとう」 早速着けようとして…以外と難しい。 「こうするんだよ」 慣れた手付きで拓己が俺の左手首に着けた。 「おぉ!初めて!」 キラキラと光る銀色のチェーンにアルファベットが二つ、NとT。 「普段は着けなくても持っててくれればそれで嬉しいから」 「拓己と会う時は着けてくるよ。練習する」 拓己に腕を取られてブレスレット越しにキスされた。 絡んだ視線が熱を持ち、手を伸ばして体を引き寄せ顔を近づけた。 「俺の側にいてくれる?拓己」 「…うん…頼まれたって離れないから」 どちらからともなく、ベッドに誘った。 二人でベッドの端に腰を掛けて服を脱がせあう。 冷房のせいか緊張のせいか…少しだけ肌寒い。 ズボンも下着も全て取り去って裸で抱き合った。 …温かい…。 温もりが嬉しい。 両手で顔を挟んで瞳の奥をじっと見る。 …自分だけを映す瞳… …自分だけしか映さない瞳…。 「はやく…だいて…」 後は高まる感情の波に飲まれて拓己を抱いた。 銀色の滴が溢れて零れるまで深く深くキスをして、身体中のあちらこちらを感じられるように手で口で愛撫する。 若干強ばっていた拓己の顔が蕩けて嬌声を紡ぎだせばもう拓己は俺のモノだと感じる事が出来た。 「身体中に直樹を刻んで、オレを直樹のモノにして!」 泣きながら訴える拓己は今までで一番綺麗で、儚げに咲くユリのようだった。 「オレ、凄く嬉しい。こんなに愛されたこと、ない」 「これからもっと愛してやる」 ベッドに寝そべりながら拓己を抱き締めた。 背中に回した手で髪を撫でる。 「…弟は…誰かに愛されているのかな?」 弟…拓己に弟が…? 「見たことないよね」 「…父親に引き取られたから…」 親の離婚…うちと同じ。 「いくつ違い?」 「双子なんだ。だから同い年」 ふうん…と相づちをはしたが…なんだか胸がゾワゾワする。 「写真…見る?」 拓己が机の上に伏せてあった写真立てを寄越した。 「赤ちゃんの時だから…」 拓己の声が耳に入ってこない。 一目見て…俺はそれが誰なのか…解ってしまった…。

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