128 / 179

第47話 『直×拓編』

拓己のベッドで少しだけうたた寝をした。 横になって休んだことで少し気分が落ち着いた気がする。 「ありがとう…拓己」 起き上がろうとする俺の肩に手を置き、拓己はそっと制した。 「無理すんなよ。まだ顔色が戻ってない」 …あれが事実なら…俺には衝撃が強すぎる…。 いや、まだそうと決まった訳じゃないよな? 「拓己は…その…弟と会いたいの?」 きょとん顔の拓己と目が合った。 「会いたいに決まってる」 俺の肩にある手に力が込められた。 「だって、血を分けた兄弟だよ?」 何故かズキン、と胸が痛んだ。 「直樹だってオレの立場ならそう思うだろ?」 あぁ、そうだ…俺だって… 「…そう思う…」 …けれど… …それだけじゃすまない… …兄さん…。 拓己は俺の体調を気遣って家の近くまで送ると言う。 …大丈夫なんだけど…俺が拓己ともう少し一緒にいたくて…日も傾きかけた通りを二人でゆっくりと歩いた。 …言った方がいいのか…事実を確認してから言うべきか…? でも、どうやって事実を確認すればいい? 頭の中で答えの出ない考えがぐるぐると渦巻く。 「…た…拓己…もし俺がおと…」 「橋本!」 勇気を出して拓己に言いかけた言葉は最後まで言えずに遮られた。 正面からクラスメイトが俺を見つけて近寄ってきたからだ。 「…桜井…」 何故俺に声を掛けてきたのか…? 心当たりが…ない… 晴海のことだろうか…? 胸に秘めた小さな不安がザワザワと音をたて始めた。

ともだちにシェアしよう!