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第49話 『直×拓編』
side直樹
嬉しそうな顔をして、桜井が余計な事を言った。
嫌な予感しかしない。
「良かったな、拓己。見つかったんだ」
凪の言葉に戸惑う拓己。
「一体何のこと?」
止めろ…!
「…え?弟がみつかったんだろ?」
拓己は知らないんだ…!
「拓己、弟に会いたいって言ってただろ?」
…俺の顔がひきつっているのが自分でもわかる。
「橋本が…そうなんじゃないの?」
俺の方を向く桜井と拓己。
拓己は一瞬俺を見たが…その顔は戸惑いから拒絶の顔に変わっていた。
「…ゃ…だ…」
「嫌だ…!」
桜井の胸を両手で突き飛ばし、拓己は走り出した。
「待って!」
咄嗟にそう言っても止まるはずもない。
どこに向かっているのか、拓己は走り続ける。
髪を振り乱し、時々声をあげながら。
大きな通りから住宅地の路地に入り込み拓己の足取りが重くなった。
肩を大きく上下させ、ふらふらとしながら…それでも歩き続ける。
「待てよ!」
掴んだ腕を引っ張って、こちらを向かす。
拓己の顔は涙でぐじゅぐじゅだった。
顔を隠すこともしないで、しゃくりあげながら足元を見つめる。
「…行こう…」
拓己を人目のない所に…できれば公園に連れて行こうと体を引き寄せたが頑なに動こうとしなかった。
「…拓己…」
「…知ってた?」
収まりきらない息づかいのなかで、拓己が俺に問いかけた。
「…直樹は知ってたの?」
「…さっき…気づいた…」
拓己はぎろりと俺を睨む。
「…んで…何で言わない…?」
言えるわけがない!
確証もなくて、そんな大事なこと!
「…他人の口から聞きたくなかった…!」
見開いた目を、瞬きもせずぼろぼろと涙を溢す。
「…ゴメン…」
…言わなきゃって分かってても…
…言えるはす…ない…。
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