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第50話 『直×拓編』

side直樹 「…一人で考えたい…」 拓己は俺にそう言った。 考えて、何か分かるのか? 黙って下を向く拓己に、俺は何ができる? 「焦るな。今晩親父に聞いてみる」 俺は拓己にそう言うのが精一杯だった。 俺は事実を知っている人に聞いた方が確実だろうと思ったが、まず家に帰って古いアルバムを探した。 すぐに見つかったが三才位から始まっていた。 拓己の部屋で見たのはもっと小さい頃の写真だった。 絶対親父も持っている。 俺はそう確信していた。 納戸の奥の古い箱を引っ張り出したり天袋に仕舞ってある段ボール箱を開けてみたり、これでもかと家探しをした。 それでも見つからない…。 手を付けたくなかったが、親父の部屋も探す事にした。 タンスに入っている衣服を取り出しその奥まで丁寧に確かめ、古そうなものは隅々まで中を確認した。 「おかしい…これだけ探しても見つからないなんて…」 乱暴にベッドにダイブした。 親父のベッド、寝心地最高かよ…。 俺のよりスプリングが効いてる。 ぼやっと天井を見ていたが、ふいっと壁側に視線を動かすと本棚の一部が目に止まった。 「これ…本じゃない」 木枠のフォトフレームが二つ本に交ざって並んでいた。 そっと引き出し、ゆっくりと目を落とすと…一つは二人の子供が笑いあっている写真で、もう一つは家族写真だった。 絨毯に若い男性と女性が座り…そして二人とも赤ちゃんを一人づつ抱いている? 「これ…親父と俺と…母さんと拓己…?」 写真館で撮影したような立派な写真。 覚えているはずないのに、目の前が涙でぼやける。 「俺…家族がいたんだ…」 ずっと親父と二人だったから、忘れていた。 母さんがいて…兄弟がいたんだ…。

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