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第53話 『直×拓編』
side直樹
車窓から刺すような朝の日差しが照りつけ、九月になってもまだまだ暑いのだと思い知らされる。
今日から二学期が始まる。
そして…16回目の俺の誕生日…。
満員電車での通学途中、振動に揺られていると時々目に入る桜井兄弟。
兄の晴海を騎士のように守る弟の凪。
異様に仲がいい。
跳ねている弟の髪を嬉しそうに直す晴海。
あんな風に笑うんだ。
晴海に目がいってしまう。
俺じゃあんな笑顔にさせてあげられなかった…。
…今俺が笑顔にしたいのは…拓己…。
「いいかな」
そいつは下校の合図とともに俺の元へ近寄ってきた。
来ると思った。
今日は始業式とロングホームルームだけ。
話をするには今日が一番いい。
「俺も話があるんだ」
微妙に距離を保って校内を連れ立って歩く俺と桜井。
無言のまま行き着いた先は…第一理科室。
「知り合いに頼んで…人払いしてある…」
参謀か。
「…プライベートな話だからな」
言葉の先を俺が続けた。
「…桜井は拓己のこと…どこまで知ってるんだ?」
うつ向きがちに腕を組み、少し考えてから
「多分橋本が思ってる以上に知ってる」
姿勢はそのままで、視線だけ俺に向けた桜井に…無性に腹が立った。
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