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第65話『直×拓編』

side直樹 「……!」 水槽で泳ぐ金魚のように口をパクパクさせて拓己が何か言おうとしている。 「まぁ…とにかく座って。コーヒーでも淹れるよ」 拓己の背中に手を置き椅子に座らせ、俺はキッチンに立って時々拓己に視線を遣りつドリッパーをセットし、お湯を注ぐ。 「去年の春、父さんに進学の相談をした時に母さんの事を聞いてみたんだ」 「…」 両手をテーブルの上で組み、真剣に俺の話を聞く拓己。 「…それから直さん…母さんに連絡して、拓己と同じ大学に通うならって条件でオッケーもらった」 「…なんで早く言ってくれないの!?」 「サプライズ的な?」 だって、まさか直さんが了承してくれるとは思わなかった。 「だから、拓己。一緒に暮らそう」 砂糖とミルクを多めに入れたコーヒーを拓己に差し出す。 「…うん…ありがとう」 「…でも…」 コーヒーのカップに手を添えて一口啜る。 「…俺達の事は言ってない」 「…うん」 緊張からか拓己の肩が上がり、顔が若干強ばっている。 「今すぐじゃなくていいと思う。けど…俺達の事は二人で…ね」 「うん…」 俺はカップごと拓己の手を包み込んでそう言った。

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