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第68話『直×拓編』

side拓己 段ボール箱に貼ってある粘着テープをベリベリ剥がして中身を取り出し衣装ケースに移す。 「直樹、遅いなぁ」 山積みになっていた(と言うほどは無いが)荷物は残すところあと二つ。 ホームセンターで買った衣装ケースは押し入れにちょうどいいサイズでいくつも重ねて積めるタイプのもの。 服の整理を始めた途端、直樹は何やら足りないと言い出し買い出しに出掛けしまった。 だが引っ越しの片付けはもう終わる。 オレは自分はズボラだが、何を隠そう整理整頓は得意なのだ。 直樹には身だしなみに気をつけた方がいいと言われるけど、自分には興味がないから見た目はだらしないまま。 「あ~腰がやられる!」 段ボールの中身を全て衣装ケースに移して片付け終了。 よくやった!オレ! そのタイミングでスマホが短く震え、着信を知らせた。 「ん?直樹…?ファミレスで昼飯…?」 しょうがないな、と空の段ボール箱の下敷きになっていたジャンパーを羽織ってすぐに家を出た。 待ち合わせの窓際席に視線を泳がすと直樹らしき人の他に…あれは…。 「拓己!」 直樹がオレに気づいて手を上げる。 「誰?」 近寄って見ると直樹の向かいに中年の男が座っていた。 「座りなよ、拓己」 直樹の隣に腰を下ろしまじまじと顔を見た。 見たことがあるような…ないような…。 「父さんだよ」 「えっ!」 照れたように頭を掻き、氷水を勢いよく飲み干している。 直樹に…似てる。 目元や体格が。 「拓己は俺より父さんに似てるよ」 「似てる…かな?」 うつ向いてチラチラ盗み見るようにしていたら両手をぎゅっと握られ、オレは焦った。 「会いたかったよ、拓己」 あぁ、この人が…父さん…。

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