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第69話『直×拓編』

side直樹 ちょっとしたサプライズのつもりで拓己に父さんを会わせたんだ。 感動の対面になると思ってたけれど二人とも遠慮がちに挨拶をする程度でお開きとなってしまった。 別れる間際に父さんが 「私の息子なんだ。何かあっても無くても頼っておいで」 そう一言拓己に言って帰っていった。 なんだか父さんの背中が小さく見える。 二人きりの生活は長くて、父さん一人になったら寂しくなるよね。 それでも、俺は拓己と暮らしたい。 父さん、ゴメン…。 「…直樹…」 黙って歩いていた俺に隣にいた拓己が顔を向けた。 「…ありがとう…」 「拓己…」 「父親って、オレにとっては想像上の生き物でしかなかったから…どんな風に話したらいいのかわからなくて…」 「俺、勝手なことしたと思って反省してたんだ」 そう言うと拓己は驚いたような顔をしてみせた。 「正直戸惑ったけど…会わせてくれてよかった。ありがとう」 優しく笑う拓己の顔がやけに眩しく見えて、急いで目をそらしたけど俺の顔は家に着くまでずっと熱かった。

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