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第76話『直×拓編』
side拓己
「…ん…」
目が覚めるとベッドの上だった。
お風呂で少々、直樹とじゃれてのぼせてしまった。
少し頭がぼうっとして体もなんだか怠くて…でも重い瞼を開けると…直樹の顔が目の前にあった。
「ん…夢…?」
右手を伸ばそうとして、隣で眠る直樹の腕がオレの体に絡んでいるのに気付いた。
「直樹は甘えん坊だな」
そうっとおでこの髪を掻き上げて鼻先に唇を近づけた。
ちゅっ、と一瞬だけキスをして、そこで何故か眠っていたはずの直樹と目が合う。
「起きて…た?」
「……」
無言で頷く直樹。
一人でお兄ちゃんごっこをしていたオレは急にいたたまれない気持ちになった。
「…見ないで」
表情を見られないように直樹の体に顔をくっ付けた。
「もっと甘やかしてよ、オニイチャン」
直樹はオレの背中に手を伸ばして抱きつくと同時に、くるっと回転し、あっという間にオレを組み敷いた。
「オニイチャ~ン」
布一枚身に付けていないオレの体に頬を擦り付けてくる。
「や…やめろ…よ…」
直樹の肩を掴み押し返すがびくともしない。
それを直樹に悟られると直樹はぺろぺろとオレの体を舐め始めた。
「やっ…あん…」
胸の先端を舐められ、オレの体が大きく波打つ。
「んっ…!」
「気持ちいい?」
ギラリと雄の顔つきで上目遣いに聞いてくる。
「ああ、気持ちいい…よ!」
直樹の顔を両手で挟み、キスをする…要領で思い切り息を吹き込んだ。
「ゲホッ…拓己ぃ…」
仕返しだ。
「負けない!オレはお兄ちゃんだから!」
オレがそう言うと、直樹はオレの隣にごろんと寝転んで笑ってみせた。
「ははっ、勝てないわ。お兄ちゃんには」
「ふんっ」
どやぁ、という顔を直樹に見せつけてやった。
「弟の直樹には特別に、時々ベッドで勝たせてやるけどね」
目をパチクリと見開いて、それから直樹が大きな声をあげて笑った。
「ありがとう、拓己」
「これからずっと一緒だからな」
「ん…お兄ちゃん」
お兄ちゃん、という言葉がくすぐったい。
俺達は会えなかった分、兄弟として不完全なんだ。
恋人だけど今まで出来なかった兄弟としての経験も…これから積み重ねていく。
「ところで直樹、お兄ちゃんはお腹がすいた。ご飯を所望する」
「ははっ、かしこまりました」
「ははは」
ベッドの上で下らないやり取りをして裸で抱き合った。
辛いことも起こるだろう。
けれど、二人でなら乗り越えていける、そう信じている。
ー了ー
『直樹×拓己編』途中で更新が不安定になりましたがなんとか終わりました!
もう少しだけ続きがありますので、少しお休みをしたらまた投稿します🍀
ありがとうございました。
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