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第173話
「…ていう事があったんだ」
傘を握る手をぼんやりと視界に入れて、僕は先程の事を恋人に話した。
源さんの話を聞いている途中で凪が僕を迎えに来たのだ。
連れが来たからと言って僕は凪と店を出て、今日会った源さんとのやり取りを包み隠さず凪に話したのだった。
「ふ〜ん」
凪は僕を見ること無く曖昧な返事だけした。
無言で歩くうちに部屋に着いた。
荷物を下ろし濡れたストールをカバンから出すが、汚れはほとんど落ちている。
後でちゃんと洗ってから…と考えていたら後ろから凪にハグされた。
「晴海…」
振り向けば凪に唇を奪われた。
凪の手は僕のシャツの中に侵入し、熱の火種を肌に移す。
「あ…こんな急に…ン」
胸の飾りを摘まれ、甘い快感に声を漏らす。
「晴海が…他の男の話をするから…」
焼きもち…?こんな事で?
「んっ…ごめ…ん…あっ」
上着を脱がされて肩を噛まれた。
凪に躾られた体は甘噛みに震え、もっと欲しいと訴える。
「凪…」
…なぎ…何度も名を呼び、誘う…。
…君が欲しいんだ。
…君の全てが。
飽く事なく求め、求められ刹那の悦びに浸る…。
凪を受け入れながら、その愛しい人の体をぎゅっと抱きしめた。
「なぎ…すき…あいしてる…」
凪は返事の代わりにいっそう激しく腰を打ち付ける。
高く抱えあげられた足の先から凪が犯す僕の胎内も、全てが君を求めるんだ。
…一緒に…いつまでも…
目の奥に閃光が瞬き、僕は闇へと落ちていった。
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