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第3話

「陛下、妃殿下」  大きな扉を開けた瞬間に、四十名ほどの側妃が一斉に挨拶をする。アルフレッドがシェリダンの椅子を手ずから引いて座らせ自らも着席した時、側妃たちも一斉に椅子に座った。  いつものように食の細いシェリダンをアルフレッドがあれこれ促しながら食事が進められていく。その光景を微笑まし気に見る側妃たちの姿は、シェリダンが王妃になったことで生まれた嫉妬心などに、彼女たちの中で一つの区切りが付けられた証拠なのだろう。  アルフレッドの限りない愛の証の一つでもある特別に用意されたゼリーをシェリダンが食べ終わったのを見計らい、揃って席を立つ。これからシェリダンの苦手な公務の時間だ。  女官が持ってきた王冠を頭に乗せ、アルフレッドはシェリダンと共に広間の玉座へと座る。玉座は寝椅子のように長いもので、王が王妃と並んで座るように作られたものだ。ゆえにシェリダンもアルフレッドの隣に腰かける。  高位高官たちが居並び、どことなく張り詰めた空気が流れた時。扉の前にいた近衛兵の二人が同時に長槍を床に打ち付けた。ダンッと鈍い音が響く。 「サーヴェ公国公子・ラウン殿下、ならびに公女・ルーフェリア殿下のご到着でございます」  両開きの扉が恭しく開かれる。扉の中央、大勢の女官や侍従を従えて一人は堂々と、一人はしずしずと歩いてくる。  一番前を歩くラウン公子はサーヴェ公国の第一公子で、短く整えられた黒髪に黒い瞳。精悍な顔立ちはシェリダンと同い年であるはずなのに、年上のように思えてしまう。  一方その二歳年下だというルーフェリア公女は小柄な身体を薄紅のドレスで包み、胸元の開いたそれは年の割に豊満な胸を強調している。アルフレッドと同じ金の巻き毛が美しく、生花で飾っているようだった。  二人は両脇に高官たちが居並ぶ中、その真ん中を堂々と歩いてくる。玉座にほど近い階下で二人はオルシア国王夫妻に跪いた。 「アルフレッド陛下、シェリダン妃殿下、この度は我がサーヴェ公国が貴国と同盟を結びましたること、恐悦至極に存じます。父の名代として、私と妹で参りました。どうぞこの親書をお受け取りください」  ラウン公子が差し出した親書をオルシアの侍従が受け取り、アルフレッドに渡す。 「確かに……。サーヴェ公国はここから少し離れている。長旅お疲れのことだろう。どうぞゆるりとおくつろぎを。夜にはささやかながら歓迎の宴を催して歓迎する」  口元に笑みを浮かべてアルフレッドは二人に立つよう促す。立ち上がった二人は軽く礼をした。

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