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第4話

「過分なお心遣い、感謝申し上げます。夜の宴では是非、妃殿下ともお話させてください」  その時、ラウン公子とルーフェリア公女の視線がシェリダンに向けられた。その視線と、ラウン公子の言葉に、なぜかサァと腕に鳥肌が立つ。ゾクリと背筋を這い上ったのは悪寒だった。 (……なぜ)  特別、ラウン公子がおかしな事を言ったわけではない。二人とも口元に笑みを浮かべていて、とても友好的だ。なのになぜ、こんなにも二人が恐ろしいのだろうか。  その後も正体のわからない嫌悪だけがシェリダンの中で渦巻き、気づけば私室に戻ってきていた。あの後アルフレッドが何を言ったのかも、いつ解散となったのかも、どうやって玉座から立ち上がり、自分の部屋に戻ってきたのかも、シェリダンは何一つ覚えていなかった。 「妃殿下? いかがなされましたか?」  茫然と立ち尽くすシェリダンをソファに促したエレーヌは、どこか心ここにあらずといった様子に心配げな表情を浮かべた。レイルも落ち着かなげにクウクウと小さく鳴いてはシェリダンの足に額をこすりつけている。 「……レイル」  シェリダンはぎこちなくレイルを抱き上げ、膝の上に乗せる。様子を窺っているエレーヌに小さく首を横に振った。 「大丈夫です。きっと、ただの杞憂でしょう」  そう、ただの杞憂だ。そう言い聞かせて、シェリダンはレイルの背を撫でる。何かを感じているのか、背を撫でられながらもレイルはジッと菫の瞳を見つめていた。

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