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兄弟

久方はあぐらをかくサタンの上で自ら剛直を迎え入れ腰を振っていた。 背面座位という体勢だがその動きは激しく、先端ギリギリまで引き抜くと一気に体重を落とし孔の中へと迎え入れる。そんな自らが望んで動いているかのような動きだがそこに久方の意思はない。 上下に動く久方の胸からは母乳が飛び散り胸を汚す。一方久方の男根は紐のようなもので根元を結ばれ、逝けないようにされ、久方は過ぎる快楽と逝けない苦しさで思考が焼き切れそうであった。 サタンはそんな久方を見ながらも陵辱の手は緩めず首筋を甘噛みし舐め、胸を揉み久方の感度を上げていく、胸に至っては弄られすぎて女の乳首とさほど変わらないまでに成長し男を喜ばせる。 「あっ、あっ、あっ、も、う許し・・・あぁ!」 久方が限界の声を上げたのはこれが最初ではない。 もう何度も何度も、やめるように懇願したがサタンは「玩具に我を止める権利はない」と一蹴しこの行為を続けている。 「さて、そろそろ貴様の餌の時間か・・・口を開けろ」 「いや、だ・・・」 唯一この行為から逃れられるであろう【餌の時間】を久方は拒絶する。 この部屋に来て最初にやらされたのがその【餌】を与える行為だった、しかし餌とは言ってもただの餌ではない。悪魔の血肉を食わせるのだ。この場合は主人であるサタンの血、それを久方はこちらに来た当初受け入れさせられた。 血が喉を通り胃へと落ちた感覚は今でも忘れられない。 あの身の毛もよだつ様な体が穢れていく感覚。 久方はあの感覚を二度と味わいたくなかった。 だが、サタンは聞かない。 「口を開けろ」と短く命じ、久方の眼前に腕を差し出す。孔はサタンの剛直に貫かれたままだ。 「噛みつき血をすすれ」 久方は目に涙を浮かべ、目の前の腕に噛みついた。 どのみち体の支配権をとられてしまっている久方に抵抗の余地はなく、サタンに遊ばれるだけなのだ。 それでも抵抗するのは己の人間性を見失いたくないため。 こくりこくりと口の端から飲み込めない血で汚しながら、サタンの血を受け入れる。己の体が穢れる感覚が身震いを起こし、サタンの剛直を締め付ける。 それにサタンはフッと笑みを零し。今度は己の力で律動を開始した。 サタンの紅い目が久方を写す。 ―――ああ面白い人間がいたものだ。 サタンがそう思ったのには訳がある。 サタンの血はとても毒が強く、並の人間が一滴でも舐めれば狂死するか、悪魔へと変貌する。しかし久方は一滴以上飲み続けて狂っても、悪魔へと成ってもいない。 それは久方の精神の強さと肉体の相性に原因があった。 特に肉体は穢れを受け付けづらく受けたとしても久方の浄化力で穢れを洗い流す。それほどまでに強い力を持った人間なのだ。 だが、相手が悪い。 悪魔の主と呼ばれるサタンの前では赤子の手をひねるようなもの。 穢れは順調にたまっていっている。 サタンは嗤いを浮かべながらも、己の命令で血をすする久方の頭をゆるりと撫でる。 三つ編みを解かれた久方は髪の長さも相まって背後から見ると女のようで、美しい。 「やめろ」 そう命じ、腕から口を離させ血にまみれ汚れた久方の口に深いキスを落とす。 息を止めるような深いキスに孔も連動するかのように収縮し締め付け律動を激しいものへと変える。 「んぅー!!」 サタンの口の中に吸い込まれた悲鳴は快虐に浮かれ気持ちいいと言っているかのよう。 やがて久方の孔の中で達したサタンは紐で縛られている久方の性器を解放し、擦り上げる。 「あぅ・・・あっ」 ぼんやりとした瞳で暗闇を見つめる久方は、堰きとめられた奔流をとろりともたつくように精液を解放する。小さく喘ぐ様子は妖艶で美しい。 これは飽きない サタンは素直にそう思い、腕の中の存在を逃がさんと言わんばかりに抱きしめた。 「三作が行方不明?」 「だそうだ、あらかた油断でもして食い殺されたんだろうよ」 「あの久方が?まじかよ」 「上位のエクソシストでもやられる事ってあるんだなぁ」 悪魔狩り日本支部。 文字通り悪魔を狩るもの達が集う場所。 支部とは言ってはいるがチームとして動くものはあまりいない。 掃討戦など大規模な作戦時には組むことがあるが基本はフリーだ。 その支部では久方三作の話題で持ちきりだった、上位の悪魔を狩れる数少ないエクソシストである彼はとても重宝されていた。そして艶やかな髪を持ち怜悧な風貌ながらも美しい容姿。公私ともに彼を気に入っているもの、もしくは人気はとても高い。 「なんでも東の街に悪魔憑きがいるってもんで向かってから音信不通なんだと。もう一ヶ月もだぜ?」 「――その話、本当か」 「あぁ、ほんとぉ・・・うわ久方兄弟!?」 三作の話を熱心にしていたもの達の机に近づいてきたのは久方。フルネームは久方一(ヒサカタ ヒトツ)、柔和な優しい面差しで黒髪のショートヘアの男と、久方弐湖(ヒサカタ ニコ)短髪を逆立てて目つきは鋭く挑戦的な態度をとる男の二人・・・。久方三作の兄弟である。 「で?三作の野郎の死体は見つかったのかよ」 「い、いえ。調査隊が向かったらしいんですけど。久方の死体は見つからなかったらしいです・・・」 「久方の死体【は】?」 「あ、はい。久方三作が向かったのは東の街でも豪族として有名だった者の屋敷だったらしいんですけど。その屋敷の家人すべて死体として見つかったらしくて、そっちは悪魔の仕業だと特定されたんっす。でも・・・」 「三作の野郎は見つからなかったと?はっ怖くて逃げ出したんじゃないんだろうな」 「弐湖」 「・・・悪かったよ兄貴」 「ありがとう」と一が告げると弐湖は従者のように兄に続いて立ち去った。 残されたエクソシスト達は三作より上の上位エクソシストに出会った興奮を隠せず声を大きくして再び話し始める。 「何かがあったとしか思えない」 「でもよぉ、あいつもエクソシストとして行動してたんなら覚悟はできてただろうし。それにもしかしたら死んでる可能性の方がでかいだろ」 「・・・その豪族の屋敷に向かうぞ」 「・・・へいへい、仰せのままに」 弐湖はブツブツとつぶやきながらも了承の意を伝え先を歩く兄の背にため息を一つ。 「畜生、休み潰れた。三作のやろう生きてたらぶっ飛ばしてやる」 こうして久方兄弟は東の街へと旅だった。

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