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第4話 愛することを許されたい

「失礼します」冷静さを取り戻し蒼が何事も無かったかのように部室を出ようとする。 「あー!待って!ちゃんと説明するから!!」海に引き止められて蒼は仕方なく立ち止まった。 「蒼は未だに悩んでるんでしょ?好きな女の子との恋が叶わなかったことを。」「何でそれを…」ギョッとして蒼はまた冷静さを欠いた。 「守護霊が教えてくれたのさ。」と言いながら他人には見えない「霊」であろうものを撫でた。 「よければ昔の話、聞かせてほしいな。」「…仕方ないですね。ではお話します。」蒼は小学生の頃の話を始めた。 藍井蒼。珍しい名前で蒼はいじめられた。でもそんな蒼も恋を、してしまった。クラスの優しい女の子に。でもそれがバレてその子はいじめられて転校。その後は連絡がついていない、と。蒼は語り出した想いが溢れて、いつの間にか全てをさらけ出していた。 「でも、未だに想いが止まないんです。叶うなら、愛することを許されたいと思うんです。」 「話してくれてありがとう。じゃあ次は俺の話ね。」「どうぞ。」海も過去の話を始めた。 「俺って霊が視えるから、家族にも気味悪がられて嫌われてて。いつもひとりぼっちだった。視えるのは仕方ないことなのに。だから、叶うならとびきり愛されたいと思う。」そう言って海は目線を…蒼にがっちりと合わせた。何かを期待しているような瞳。蒼はその瞳の意味が理解出来ず、「何ですその目。」と呆れながら問いかけた。 「愛したい蒼、愛されたい俺。利害が一致するよね!だから付き合お…」「嫌です」蒼は心底嫌な顔をして即答した。 「第一、僕は海さんに特別な好意はありません。」「うん、俺もないよ。」「じゃあなんで付き合おうとか言うんですか」どこかずれている海に蒼は理解できないといった顔をした。 「それで試したいことがある。提案なんだけど…」海が呆れ顔の蒼を見つめる。 「俺ら二人と真秀明日駆くんの二人の四人で遊園地で…Wデート!」「W…?」突然の提案に蒼はついていけない。 「なんでそんなこと…ていうか何で桐谷先輩と日比谷先輩を巻き込むんですか?」「明日駆くん、真秀に気があるみたいだから。」「へ、へぇ…」海は明日駆の心もお見通しのようだ。 「というわけでWデート決定!!」海の独断と偏見だけでWデートが決まってしまった。 当日の日曜日、いつも通り真秀は遅れてやってきた。 「よっ。」「遅いよ真秀〜。」明日駆はあれからもう真秀のことばかり考えてしまっていて、今も何てことない私服姿に見とれてしまっていた。 「と!いうわけで!ここからは二手に分かれようね〜」海は明日駆に「頑張れ」の意を込めたウインクを飛ばした。真秀は、何を考えてやがる、と海の企みを見透かしていた。そして明日駆は海にナイス!と感謝を飛ばし、ここから先のことを考えていた。 「明日駆、明日駆…」真秀の呼びかけにも気づかない。「明日駆!」「ひゃいっ!!」何度も呼ばれてからやっと気がついた。 「行くぞ。」「う、うん。」真秀には明日駆の気持ちが手に取るように分かっていた。俺のことが好き、ということが。今日はからかってやるし、文化祭終わったら遊んでやってもいいかな、と思う反面、そうはいかない不安材料もあった。どこかで見ている、あいつがいるから。 「真秀、見てるからね♪」

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