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第5話 ドキって何だ

二手に分かれてのWデート(?)が始まった。開始早々、海が勝手に走り出した。 「ちょっと、勝手に行かないでください。全く…」「メンゴメンゴ☆」蒼に手を掴まれやっと立ち止まる。 「はぐれないようについて歩いてください。」「やーん♡リードしてくれる蒼かっくいー♡」海は自身が提案したWデートが実行に移ったからかテンションがいつにも増して高い。 それからしばらく二人は色んな遊具を乗り回した。柄じゃない、と仕方なしに海に付き合う蒼と楽しむ海。対照的な二人だ。そして、最終的にあろうことか。 はぐれていた。仕方ないから迷子センターに行こう。と蒼は迷子センターに向かった。いい歳こいた高校生、部活の先輩が迷子センターにいたら恥でしかないが。 「失礼しま…」迷子センターに到着し、ドアを開けた途端涙目の海が蒼めがけて飛び出してきた。 「蒼ー!!」「海さん、やっぱりここに…」感動的(?)な再会を果たした二人だった。 「あー…疲れた〜」ベンチに座った蒼は思わずそんな言葉を漏らした。初夏の太陽の下、あちこち歩き回って運動したかのように汗を流していた。 「勝手な行動はするなとあれほど…ん?」息を絶え絶えにしながら海を叱ろうとした時、海の手はハンカチを握り、蒼の顔を伝う汗を拭いていた。 「俺のために一生懸命になって…汗かいて探してくれてありがとう。」「い、いえ…」思いがけない行動と感謝の言葉に蒼は叱ることを忘れた。そして、なぜか胸が高鳴るような、海の全てが刻まれるような感覚がした。 その頃、たくさん遊んだ真秀と明日駆。明日駆は度々チャンスを狙っていたが、今のところ全く進展がない。内心焦っていた。一方の真秀はいつからかってやろうかと考えていた。 「メシにしようぜ」「そうだね…」二人はフードコートに向かった。 真秀はたこ焼き、明日駆はラーメンを食べることにした。 「おい明日駆、メガネ曇りまくってるぞ。」「あはは、ラーメン食べるから当たり前だよ。」メガネを真っ白にした明日駆は全く気にせずラーメンを食べようとした。 「メガネ取れよ、見えないだろ。」「取ったらもっと見えなくなるよ!」「いいから」「あっ、ちょっと!」真秀は無理やり明日駆のメガネを取り上げた。そしてついにからかった。 「だってこっちの方が、可愛い顔がよく見えるだろ?」明日駆の鼻先を指でつんと突いた。その行動に、明日駆はラーメンの熱さからではなく顔を真っ赤にして、 「真秀ー!!からかわないでよー!!」と大声をあげた。 そして集合まであと10分。明日駆的には「マジで進展がない」といった状態だ。真秀は一回からかったしこれでいいか、といった気持ちだ。明日駆は心の内で計画を立てていた。真秀の意表を突けるようなとっておきの作戦がある。実行するなら今だ。と声を発した 「待って真秀!二人で話したいことがあるから来て…」真秀は告白か、と明日駆の行動を察した。 人気のないお化け屋敷の建物の裏側、ここなら二人きりだ。明日駆はじっと真秀を見つめる。 「で、話ってなんだ…よ?」明日駆の手で真秀のマスクを顎下に下げた。きょとんとする真秀。その隙を狙う。 「ごめん。」「は?いきなりなんだ…」出会って初めて遊んだあの日のように、今度は明日駆から真秀にキスをしたのだ。真秀のように口ではなく、頬にだが。 「初日のお返し!真秀みたいに口にはできなかったけど。」明日駆は計画を実行した達成感からか顔を赤く、嬉しい、といった表情を浮かべいたずらに舌を出した。 「おう…」流石の真秀も意表を突かれきょとん顔を浮かべたままだ。 「ふーん、お前にしてはやるじゃん。」それでも平静を装い返した真秀。だがその時、胸がなぜか高鳴り、明日駆のことが脳裏を一気に埋め尽くした。この感情はなんなんだ、という葛藤の始まりだった。 そして解散後、蒼も真秀も考えていた。海のこと、明日駆のこと。二人はこの時同じ感情を持っていた。それは、自分では認めたくはないが、あっさりと恋に落ちた。という感覚だ。ずっと鼓動が早まっていて、いつぶりなのか分からない恋煩いに苛まれていた。 「ドキって何だ…?」思わず口に出てしまうくらい、恋をしていた。 そんな四人の様子を、少し高いところから見ていた人物がいた。明日駆と真秀の様子を見て、舌打ちをした。 「僕の真秀に何してくれてんの、日比谷明日駆…!!」嫉妬にもがく凛の姿があった。 「…でもまぁいいさ。僕ももうすぐ、君たちの元へ会いに行けるから。」そんな意味深な言葉を残しその場を離れた。

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