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第8話 君がいなくなっても
そんなこんなで凛の作曲担当での加入が決まった。明日駆は突然のことでびっくりはしているが歓迎ムードだ。他三人も、顔だけは歓迎している様子だった。が、内心凛の腹の内を探っているようだ。
「それで凛、その曲ってどういう曲なの?」海の質問に凛が答える。
「タイトルはスターリィカルテット。君たち四人、輝く四つの星が四重奏を奏でる曲さ。」スターリィカルテット。意味が込められた名前らしい。
「でも今からオリジナル曲の練習はキツくないですか?」蒼は疑問そうに問いかける。
「君たちならできるよ、きっと。」四人を信頼した表情で凛が答えた。そしてもう一つ、言葉を付け加える。
「あ、そうだ日比谷明日駆くん。僕、実はギターができるから、君がいなくなっても大丈夫だからね。」清々しいまでの笑顔でそう言った。
「う、うん…」明日駆は言葉の真意を理解していなかったが、戸惑いつつ答えた。この時点で凛の中で着々と計画が立てられていた。
「ねぇ、皆知ってる?」「凛くんなになに?」クラスメートに声をかける凛。
「日比谷明日駆くんの面白い噂。」もうすぐいなくなってもらう。心の中で凛は舌を出した。
最近、なんだか変だ。と明日駆は環境に違和感を覚えるようになった。周りの視線が妙に痛い。何をしたかは覚えていないが。でも、一人だけ違った。凛だけはなぜか優しい。今日も朝から声をかけてくれた。明日駆はもとより学級委員長だから威張っているだの言われることがあった。でも、今までのとはまるで温度が違っていた周りの対応。もう少し耳をすませて生きてみようと思った。
トイレに行こうと廊下に出ると、向こうから歩いてくる真秀の姿。明日駆は迷わず声をかける。
「真秀、一緒に…」真秀は一度も明日駆と目を合わせずに、そのまま横を過ぎていった。その場にいたクラスメートたちがヒソヒソ声で噂を始める。
「ホモの日比谷明日駆、また真秀くんに声かけてるよ〜」「うわ〜、真秀くんかわいそ〜」「桐谷のヤツ災難だよなぁ、男に無理やりキスされるなんて。」
この時、明日駆の目の前にはただひたすら長い廊下しか映っていなかった。頭の中から、大切なパーツが抜け落ちたようたそんな気がした。
それからしばらく、明日駆は学校を休んでいた。文化祭まであと1ヶ月。真秀たちからの連絡は無視している。自分には代わりがいる。噂を流した凛に、全て任せるつもりでいた。自分の代わりに、凛が輝いてくれることを頭に思い浮かべていた。
今日も凛の隣は空席。机には落書きだらけ。いい気味、とその席を見るたび凛はほくそ笑んだ。あとは真秀が自分のものになるだけ。
「凛、俺だ真秀だ。」その時、教室の扉が開かれた。
「あっ!真秀!」「放課後、話がある。」真秀は、凛を放課後に呼び出すことにした。
「それで話ってなぁに?」そわそわと、嬉しそうな凛に対して表情一つ変えない真秀。勇気を振り絞り声を出した。
「俺はお前との今の関係に、終止符を打ちに来た。」
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