6月22日（土）20:16　最高気温29.1℃、最低気温22.1℃　晴れ 　相も変わらず私語厳禁の修行僧のような食事風景だったから、 「これ何？」 　と樹から訊かれたとき、一瞬どう答えるべきか迷った。 　今日はカレーだった。セロリとなすとズッキーニの夏野菜カレー……といえばおしゃれカフェメニューみたいで聞こえはいいけど、要は冷蔵庫の余りもんをぶっこんだだけだ。それなのに樹はめずらしくおかわりまでしていた。 　……はて。何、とは…… 　樹のスプーンの上には、ズッキーニ。 　何だろう。入れちゃまずかっただろうか。いや、何もおかしくないよな。夏野菜カレーの定番だよな。 　言葉の裏を読みすぎてしまったけれど、樹は本当に純粋に、「これは何か」と訊いているらしかった。 「ズッキーニ……だけど」 「へえ、これがズッキーニ」 　もしかして知らなかったんだろうか。樹が。めずらしいこともあるもんだ。 「ズッキーニとかアボカドとかタピオカとか、そういうのとは一生無縁だと思ってた」 「あー、分かる、何かそういうおしゃれな響きのね」 「この歯ごたえ残ってる感じがいい」 「うん、そうだよねー、完全にくたっとなっちゃうよりも、そっちの方が俺も好き」 「これって芋系？」 「うりとか……かぼちゃとかの仲間っぽい。便利なんだよね、かぼちゃとかじゃがいもとかと違って煮崩れる心配しなくていいし。最後にポンポンと放り込むだけで。きゅうりがちょっと太くなった感じで、でもきゅうりみたいなイボイボがなくてつるっとしてて……」 　そこまで言って卑猥な妄想をしてしまった自分は、相当欲求不満なんだろう。 　だって……もういつから……梅雨に入ってからは、やってない。 　でも樹にねだったら、また心底軽蔑しきった眼差しで一笑に付すんだろう。でも自分がねだらなかったら、たぶん、きっと、このままだ。樹の方からやりたいなんて言ってくることは万にひとつもありえない。もしかしたら一ヶ月……一年……未来永劫セックスレスなんてこともありえるんじゃないか。 　それでも樹はあくまで日向の方が、おかしい、という目で見てくるに違いない。