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第4話
「名前を言いなさい」
重圧的な態度の男に、ベッドの上のテオは反抗的に顔を背けた。
気がついたら、心地の良いベッドの上で寝かされていて、品のいい調度を見てテオはそこがリクの家だと理解した。
彼が起きてからはずっと、スーツ姿でメガネをかけた男に身元を尋ねられ続けている。
男は目覚めたテオにこの家の執事だと名乗って、淡々と状況を説明した、高圧的な態度が鼻についた。
首筋をリクに噛まれたことにより、二人は正式に番になってしまっているということだった。
個人情報を皮膚にプリントされたチップを、テオは脱走前に使用できないように構造を変えていた。
首筋はリクに噛み付かれた痕が残り、まだじくじくと痛む。
「だから、言ってンだろ。番は解消で構わない。元々ガキ相手にそんな気はサラサラねえし」
「そんな非人道的なことは、名高い遠野家で起きてはいけないことだ。君はあまりに無知過ぎて、簡単に番を考え過ぎている。野良オメガは、本当に無知でイライラする」
言葉を聞いて執事は説教をするが、テオは面倒そうに溜息をついた。
名前が知られれば、実家に連絡がいく。
折角脱走したのに、連れ戻されるのは勘弁だ。
「俺は一人で生きていくつもりだし、番なんかは要らない」
アルファの庇護下に入るなんて、テオにとっては学校に居るよりも御免なことだった。
「アフターピルは飲ませたが、君は薬は効きにくいのだろう。既に妊娠をしている可能性もある」
「だからッ、俺は慰謝料くれとかセコい話はしない。子供が産まれたら育てるし」
「遠野家の血筋の子供を、訳の分からないオメガに育てさせるわけにはいかないのだよ」
親権の問題とかもあるので、身元をハッキリさせる必要があると必死に男は熱弁する。
財閥の御曹司の不始末を、不始末として放置するわけにもいかないようである。
「じゃあ……子供が産まれたら……この家に預ければいいのか」
産んだことはないので、テオには産まれた自分の子を手放すことに対する想像ができなかった。
「確約が必要だ。身元をきちんとしてもらわないといけない」
堂々巡りの内容に、埒が明かないとテオは天井を見上げた。
「お待ちください、璃空様ッ」
激しく扉が開かれて、腕を掴む男たちを振り切るようにしてリクは部屋に入ってきた。
「テオさん!……大丈夫ですか!!」
必死な形相でベッドへと駆け寄るリクに、テオは少し驚いた表情で目を見開く。
会いにくるとは思ってもいなかったのである。
「別に怪我とかしては……いねえ……けど」
近くまでくると、ぶわっと広がる香りにごくりと息を呑む。
この、におい、だ。
これで……っ、おかしく……なった。
発情期なんかに……なってねえのに……。
リクは口元を押さえて顔を背ける。
「か、かおりが……またっ」
執事は庇うようにリクを抱き寄せて、テオから引き剥がした。
「まさか……。運命の番……なのかもしれません」
信じられないという表情を浮かべる執事に、テオは辛そうに眉を寄せて手で鼻を覆った。
「どうでもいいから、リク……外に出てくれねえか。オマエのせいで、身体がおかしくなる」
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