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第5話

「……ごめんなさい……、テオさんが許してくれないの……っ、わかってたのに、僕、心配で……貴方は僕の命の恩人なのに……」 執事に抱きかかえられたまま、肩を震わせるリクをテオは指先の隙間から覗き見て、冷たい言い方だったなと目を伏せる。 リクのせいではないことは明らかで、何もかも偶然が重なってしまったことだということは、テオには理解出来ていた。 近くに居るだけで身体が熱くなって仕方がないのも、噂で聞く運命の番とやらなら有り得る話である。 「……あやまんねえで……いいから。俺は怒ってねえし。オマエは悪くない……気にしないでくれ。番のこともさっさと解消してくれ」 理性を飛ばしそうになるのを堪えて話すが、物言いがつっけんどんになってしまう。 優しい言葉をかけてやりたいと考えたが、そんな余裕はテオにはなかった。 「……そんなことできないよ。僕が、貴方の言うことを聞かないで帰らなかったせいだから。僕の一生かけて責任を……とらせてください」 年齢がいくつか分からないが、はっきりとした物言いで、意思がこもっている言葉にテオは掛け布団を被ってベッドに潜り込んだ。 番を解消されたオメガは、心に痛手を追って廃人になるとか聞いたことがある。 しかし、この子供に対してテオは何の感情もなく、痛手など感じそうになかった。 「そういうの重いし……いらない。オマエだって、好きなやつがこれからできるかもしれねえし、俺なんかよりそいつと一緒になる方が幸せでいいだろう」 少し呼吸は荒くなるが、布団の中に潜っていた方が楽だと感じて、テオは目を伏せた。 「……貴方の犠牲の上の幸せだなんて……僕は嫌です」 学校で出会ってきたアルファたちとは違う考えのリクの言葉にテオはシーツを握り締めた。 アルファにとってオメガは、子供を作るための道具でしかないから、どれだけ愛されるようになるか必死に考えなくちゃいけないと、同級生たちは言っていた。 他人に依存するような生き方は真っ平だと、反抗心しかわかなかった。 犠牲なんて考えないと思っていたが、きっとリクはまだ純真無垢なだけだろう。 何か言葉を返そうかとテオが口を開きかけると、リクは言葉を続ける。 「貴方を抱いて……貴方を一生僕のものにしたいと、思ってしまったんです」 必死に背中にかけられる言葉に、テオは唇をきゅっと噛み締める。 「モノね……まあ、オメガなんて……オマエらにとっちゃ、モノでしかないだろうよ……。初めてだったから、そんな風に思うだけだ……」 どうしても辛辣になってしまう言葉を止められずに、テオは背中を丸めた。 「違います。言い方を間違えました。モノだなんて考えてません。今は……僕は頼りないから……。貴方に相応しくはないかもしれないけど……僕は番を解消しません」 番を解消できるのはアルファだけで、オメガには何もできない。 泣きじゃくりながら告げるリクの言葉に、テオは嘆息する。 元々誰かと番になる気持ちはなかったので、テオにとっては問題ではなかった。解消された方が精神的に問題が出る可能性があるのなら、リスクはない方がいい。 「わかった。オマエがそれでいいなら、俺は構わない。好きにしろ。だが、それだけだ。オマエとは関係はもうもたない」 「いやです。テオさん……僕は、貴方を……お嫁さんにしたいです」 「璃空様、貴方には許嫁がいるのですよ」 「そんなの要らない」 執事の慌てた声に、テオは精一杯の気合いを入れて起き上がって、リクの肩を掴んだ。 「馬鹿にするな、俺は一人で生きていく」

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