2 / 8

ドラッグセックス②

 そう。  それは、昨日のこと。  俺、栗橋(くりはし)(のぞむ)は、周りからそこそこ期待されている陸上部の準エースの高校三年生。  三年になってからは、いつも以上に練習をし、結果を残し続けていた。  そして、今日。  高校生最後の大会の選抜がある。  これだけは。  ここだけは。  行かないといけない。  どうしても、次の大会で優勝したい。  その気持ちだけだった。  ただ、それだけ。  病気の父を元気にしたい。  天国の母に見てもらいたい。  そんな純粋な気持ちで、昨日は張り切って、練習をしていた。  俺の競技はハードル。  昔から得意だった。  両親は、俺にはその才能がある、と褒めてくれた。  失敗したら、慰めて、解決方法を一緒に探してくれた。 ――よし、やるぞ。  そう思い、いつものように走って、ハードルを跳ぼうとしたとき。  上手く足が上がらず、俺はそのまま倒れた。  その際、足を変にひねったかで、怪我をした。  悲しくて。  でも、俺は諦めきれず。  何か道はあるか? と、考えていきついたのが、薬だった。  勿論、いけない。  それは、わかっている。  だが、俺はやるしかなかった。  薬の入った注射器に手を伸ばし、怪我をした足に刺そうとすると。  その注射器から『おい』と渋い男の声がした。  俺は驚き、数回まばたきをし、注射器を見る。 「な、何……?」 『小僧、本当に良いのか?』 「え? だって、この薬を使えば、どんな怪我も治るし、超人のような力も手に入るんでしょ……?」 『確かに、儂の力を持ってすれば、簡単じゃ。しかし、小僧。小僧の怪我は、二週間もすれば治るものじゃ。なら、せん方が良い』 「む、無理です! 明日なんです! 明日……夕方なんです。それに間に合わないと、意味がない!」 『……ほぅ。まあ、儂は止めん。使うが良い』 「え……?」 『儂は薬神(やくがみ)と言う。小僧の名は?』 「く、栗橋望」 『望か。面白い名じゃ。儂は薬憑きの神。ゆえに、儂の力のある薬は、どんな怪我も治る。そして、儂の力も少し入り、以前とは違う力を手に入れることができる』 「…………」 『副作用も、勿論ある。それでも、使いたいんじゃろ? なら、使え!』  薬神に言われ、俺は怪我をした足に注射器を刺した。  すると、怪我の痛みは消え、すぐに治った。  嬉しくなり、俺は学校に電話し、顧問に怪我が治ったことを伝えようとした。  その時、体が熱くなり、電話を落とした。 「っ、ぁあっ、な、何これ……っ! 熱い……」  吐息の混ざった俺の声は、女のようだった。  それも、ただの女ではない。  AV女優のような声。 「俺に……、な、何し、た、ぁあっんっ」 『ククク。言ったろ? 副作用がある、と! そして、儂の力が入る、と!』 「はぁっ、はぁっ」  まともな思考ができない。  視界はぼやけ、見えるのは和服を着たガタイの良い男。 ――良いオトコ……。  自然と涎が出て、俺はその男に。  オトコに、手を伸ばし、ぼんやりした頭で言う。 「激しく抱いて」

ともだちにシェアしよう!