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ドラッグセックス②
そう。
それは、昨日のこと。
俺、栗橋 望 は、周りからそこそこ期待されている陸上部の準エースの高校三年生。
三年になってからは、いつも以上に練習をし、結果を残し続けていた。
そして、今日。
高校生最後の大会の選抜がある。
これだけは。
ここだけは。
行かないといけない。
どうしても、次の大会で優勝したい。
その気持ちだけだった。
ただ、それだけ。
病気の父を元気にしたい。
天国の母に見てもらいたい。
そんな純粋な気持ちで、昨日は張り切って、練習をしていた。
俺の競技はハードル。
昔から得意だった。
両親は、俺にはその才能がある、と褒めてくれた。
失敗したら、慰めて、解決方法を一緒に探してくれた。
――よし、やるぞ。
そう思い、いつものように走って、ハードルを跳ぼうとしたとき。
上手く足が上がらず、俺はそのまま倒れた。
その際、足を変にひねったかで、怪我をした。
悲しくて。
でも、俺は諦めきれず。
何か道はあるか? と、考えていきついたのが、薬だった。
勿論、いけない。
それは、わかっている。
だが、俺はやるしかなかった。
薬の入った注射器に手を伸ばし、怪我をした足に刺そうとすると。
その注射器から『おい』と渋い男の声がした。
俺は驚き、数回まばたきをし、注射器を見る。
「な、何……?」
『小僧、本当に良いのか?』
「え? だって、この薬を使えば、どんな怪我も治るし、超人のような力も手に入るんでしょ……?」
『確かに、儂の力を持ってすれば、簡単じゃ。しかし、小僧。小僧の怪我は、二週間もすれば治るものじゃ。なら、せん方が良い』
「む、無理です! 明日なんです! 明日……夕方なんです。それに間に合わないと、意味がない!」
『……ほぅ。まあ、儂は止めん。使うが良い』
「え……?」
『儂は薬神 と言う。小僧の名は?』
「く、栗橋望」
『望か。面白い名じゃ。儂は薬憑きの神。ゆえに、儂の力のある薬は、どんな怪我も治る。そして、儂の力も少し入り、以前とは違う力を手に入れることができる』
「…………」
『副作用も、勿論ある。それでも、使いたいんじゃろ? なら、使え!』
薬神に言われ、俺は怪我をした足に注射器を刺した。
すると、怪我の痛みは消え、すぐに治った。
嬉しくなり、俺は学校に電話し、顧問に怪我が治ったことを伝えようとした。
その時、体が熱くなり、電話を落とした。
「っ、ぁあっ、な、何これ……っ! 熱い……」
吐息の混ざった俺の声は、女のようだった。
それも、ただの女ではない。
AV女優のような声。
「俺に……、な、何し、た、ぁあっんっ」
『ククク。言ったろ? 副作用がある、と! そして、儂の力が入る、と!』
「はぁっ、はぁっ」
まともな思考ができない。
視界はぼやけ、見えるのは和服を着たガタイの良い男。
――良いオトコ……。
自然と涎が出て、俺はその男に。
オトコに、手を伸ばし、ぼんやりした頭で言う。
「激しく抱いて」
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