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ドラッグセックス④

 薬神の後ろから、何か触手のような物が五本ほど現れる。  にゅるにゅると。  にょろにょろと。  生き物のように動き、触手は俺を見る。 ――ああ、怖い。  殺される。  殺されてしまう。  俺はそう思い、逃げようか一瞬考えただけで。  その内の二本が、俺の腕を一本ずつ持ち上げ、拘束する。 「あっ、い、あっ!」 「ククク。殺さんわ、望。儂は、気に入ったものはとことん知り、手に入れたいんじゃ」 「ぁ、ぃ、怖い……っ」  五本の内、四本は細い。  しかし、一本は薬神のちんこくらい太い。 ――あんなのにも、ヤられたら。  今度こそ、俺は俺ではなくなる。  嫌だ、嫌だ、と。  俺は足をバタつかせる。  すると、残りの細い二本が、俺の足を一本ずつ拘束する。  これで、もう俺は動けない。  逃げることも。  暴れることも。 ――ああ、夢なら早く覚めて。  熱が引き、冷静さを取り戻しつつある俺にとって、今は地獄でしかなかった。  薬に頼らず、運がなかった、と諦めれば良かった。  そうすれば、こんなことにはならなかった。  でも、俺はそれをするか?  いや、しない。  俺は、どんなに理性が強くても。  薬に手を出した。  もしかしたら、このままセックスされ続けて、快楽のまま死ぬのかもしれない。  病気の父を置いて。  そう思ったとき。  俺の家の電話が鳴った。  留守番電話サービスに繋がり、メッセージを相手は残す。 『生方(うぶがた)病院です。望くん、ごめんなさい。お父さんは、たった今、お亡くなりになられました』 「っ!」 『帰ってきたら、連絡してください』  そう言って、電話は切れた。  俺は、ガクッと力が抜けた。  唯一の肉親が、亡くなった。  今、ここで俺が死んだら、父に会えるかもしれない。  母にも会えるかもしれない。  また家族で過ごせる。  なら、もう良い。  俺が、頑張る理由なんて、どこにもない。 「ふふ……。うふふ、あははは! あはははははははは!! ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!! アッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!!」  俺は笑って、薬神に言う。 「悲しい気持ちとか、全部ぶっ飛ぶくらい、俺を快楽に溺れさせてよ」  俺の言葉に、薬神は頷く。 「勿論。お前の願い、全部叶えよう。そのために、もっともっと、感覚を失おうか」  望、と薬神は俺の名前を呼んだ。  それだけで、俺の脳みそは、考えることをやめ。  全てを、薬神に委ねよ、と指令した。

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