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day2

 やっべえ、寝坊した。  すぐに着替えて家出て電車乗って……学校ついたら1時間目の途中か。  完全アウトだな。  つうか昨日と丸っきり同じパターンじゃん。今日も雨だし。だっる。  ◇◇◇  危ねえな。駅の階段、雨降るといっつも滑るんだよ。絶対誰かしらコケてんじゃん。そうだ昨日も──。  思い出そうとした時、目の前でスーツの中年男性が派手にすっ転んだ。  そうそう!ああやって転んで。  んで、昨日の奴はカワイソーに公衆の面前でヅラが──。  ──えええ!?あんたも!?  立ち上がった男の頭皮がエキセントリックに露出している。  ぶふぉうっ。あんの?2日連続ヅラずれの瞬間に遭遇とか。あったけど。超レアケースじゃね?  ◇◇◇  教室に入ると先生の声が飛んでくる。 「藤遅刻なー。今月5回目じゃないか。たるんでるぞ」  なんかそのお説教聞いたことあるー。昨日も5回つってなかった? 「さーせーん」  一限目──国語?あれそうだっけ?まあいいや、どうせ寝るし。  後ろの席で夏越が……見てる。食い入るように俺のこと見てんな。  全然気付かなかったぞ。今までずっとそうだったのかよ。  授業が終わって早速、前の席の古林(こばやし)の背中をつつく。 「すごくね?2日連続でズラがずれるの目撃するって。昨日と同じ時間だし同じ奴かも。ウケる」 「マジでそんなことあんの。マンガじゃん。昨日って朝早くからどっか出掛けたのか?」  古林が寝ぼけた事を言い出した。 「学校だよ。俺昨日も遅刻したじゃん。今日と同じ時間に」 「昨日は日曜だろ。なに言ってんだよ」 「は?昨日は月曜だろ」 「お前大丈夫か。月曜は今日」  ──なに、言ってんだ?曜日間違えるわけねえだろ。しかも週明けの。昨日は間違いなく月曜だっつうの。今日は火曜だろ。  言い返す前に先生が教室に入ってきた。の2限目の数学の先生が。 「ほら今日が月曜だろ。目ぇ覚めたか」  ほらって言われても。  え?今日が火曜じゃなきゃ昨日の俺の一日はなんだよ!?あれ夢?夢なの?  ──んなわけ、なくね?  ◇◇◇  なんか昨日と全く同じ一日だった……いやいやいや、そんなのありえないじゃん。  今日一日のこと全部デジャブで片付けた方がまだ無理がねえよ。  その話まえにも聞いたな。って事しかない一日ってのも不自然なの分かってるけど、もう一回月曜やってるって考えるより納得できるだろ。  傘、またパクられてるな……ビニ傘だしこんなの日常茶飯事だ。運悪く昨日も今日もパクられただけだって。  なんかわけ分かんねえよ。でも、どっちにしろこの後はっきりするだろ。  昨日は絶対にイレギュラーだって事件が起きてんだよ。  今日がまた月曜っていうなら夏越は俺に告白してくるはずだ。だけど昨日振ったんだから有り得ねえ。  俺は夏越が告白してこない方に賭ける。当たり前だ。  ◇◇◇  下駄箱で昨日と同じように夏越に出会(でくわ)す。  一瞬合った視線を夏越が逸らして俺の方に歩いてくる。  全く同じじゃねえか。  嫌な予感がする。 「藤いま帰り?」 「ああ──うん」 「傘、持ってないの?」 「なんかパクられた」 「酷いね」 「べつに」 「あのさ……」  昨日と同じ会話を繰り返し夏越が言いよどむ。  やめろ。その先を言うな──言うなよ。 「俺、藤が好きだよ」  ニュアンスが若干違う……けど意味は同じだ。  結局……告白されてんじゃねえか。  どういうことだよ。 「わりいけど」 「そっか──変なこと言ってごめん。俺の傘、使って。じゃあね」  やっぱり俺に傘を押し付けて夏越は走って出ていった。  昨日よりあっさりしてるが流れは一緒だ。  俺の反応が違うってのは誤差の原因になるだろうな。  だめだ──違うだろ!?  なにソッチ寄りで受け入れようとしてんだよ。  

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