14 / 24

第14話 恋ですか

Nishikura side――― ふぁぁっ―――と、晴也は欠伸をしながら、駅から高校までの道のりを歩いていた。 今日は休日だから、授業はない。 が、サッカーは毎日ある。 いつもと変わらず6時に起きて、朝練の更に前の自主練をするために登校していた。早朝ではあるけれど、サッカーだけしていればいいと思えば、足取りも軽くなる。 正門を越えてグラウンド側に向かうと、職員用の駐車場が目に入った。 ―――あの車。 ガラガラの駐車場の1番端に黒のエクストレイルが止まっている。確か、佐々原のモノだ。 こんな早朝から来ている筈はないので、昨日は置いて帰ったのだろう。 エクストレイルを眺めながら通り過ぎて、刺さると痛そうな木の生えている角を曲がる。ちょうどその時に、車の乗り入れてくる音が追いかけるように聞こえてきて、晴也は何となく足を止めた。 背後を振り返るが、刺々しい木が邪魔でもちろん車は見えない。見えないが車が停まって、バタンとドアの開いて閉まる音はする。 でも、わざわざ引き返して見る気にはならず、晴也は再び足を進めた―――が、聞こえてきた声にピタリと体を固めた。 「―――先生、助かりました。早くからすみません。」 佐々原の声だ。 ひとりではないらしく、誰かに話しかけている。誰かが佐々原を送ってきたらしいと会話から分かる。 昨夜、佐々原は誰かと一緒だったのだ―――と、理解すると同時に、その誰かに思い当たり、晴也はグウッと喉が詰まった。 「いえいえ、ついでだから。」 「運動部は大変ですね。うちなんて平日すら活動してるのかも妖しい。」 ―――やっぱり、高木。 ショックを受けている。思っていた以上に仲の良さげな二人の様子がショックだった。 「でも、将棋部にはプロの木之下がいるから、安泰でしょう?」 「部活にはあまり来ませんよ。在籍してくれてるだけで有り難い。ちゃんと高校通いながらですから、大変でしょう。木之下は本当に努力家で。」 「そういえば、この前も勝ってましたね。」 晴也の知らない木之下という生徒の話に花を咲かせている。高木に対して敬語まじりではあるけれど、佐々原の気安い話し方に、胃の縁が沈む。 二人を引き離したくて仕方ない。もうずっと、そんな風に思っていた。 ―――あ~、マジか~。 とうとう自覚してしまった。 橘に言われた時は、笑い飛ばしせた筈なのに、今は一ミリも口角が上がらない。吐きそうなくらいに気分が悪い。 いつの間にこんな事態になっていたのだ。 ちくしょう―――と、誰に対してか分からない悪態をつく。反して、体は力を失い晴也は膝を折って、その場に踞った。目線が下がっても、二人の姿は刺々しい木々に遮られて見えない。 「あ、この服、月曜日に返しますね。」 佐々原の言葉に、ハッ―――と、晴也の口から笑うような息が出た。 服を貸し合うような仲なのだ。男友達なら、服の貸し借りくらいおかしくはない。―――けれど、もしかすると、違うかもしれないけれど、二人は、 ―――付き合っているのか。 何となく、ただの友達、もしくは同僚に見えないのだ。二人の抱き合う姿が容易く想像できつしまう。 沸いてくる想像を打ち消せず、ひとり嫉妬で狂いそうだった。二人の前に飛び出して行って、佐々原の手を掴み、高木から奪い去ってしまいたい。 そんなこと―――。 佐々原が車に乗り込み、高木が校内に入っても、晴也はそこに踞ったまま攻撃的な木の先端を睨み付ける事しかできなかった。

ともだちにシェアしよう!