15 / 23
さようなら~別れの時。
しかし彼は首を振ると、ウェリーを横抱きにして寝室へと運ぶ。
彼は優しい。たとえ卑しいオメガの性を持つウェリーに対してでさえも自分の欲望を抑え込み、こうして思いやる。
けれどもその優しさは時に、ウェリーを苦しめる。
……ダメ。泣きそう。 いっそのこと、奴隷のように扱い、酷く抱いてくれればこのような気持ちになることもなかったのに……。
ウェリーは溢れ出てくる涙を堪えきれず、彼の肩口に頬を寄せる。
その時だ。ウェリーはチュニックに付いているものを発見した。
胸元よりも少し下。
そこに赤い染みのようなものが見えた。
(これは紅……?)
もしかすると、もう彼は意中の女性を見つけたのかもしれない。
疲労しているからと自分を抱かないのは、もう誰か別の女性を抱いた後だからということではないか。
ああ、不安に思っていたことがとうとう現実になってしまった。
ーーもう、傍にはいられない。
ウェリーは深く目を閉ざし、屋敷を出る決意をした。
ともだちにシェアしよう!