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別れ~最後のあがき。
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――――――。
ゼフィールは疲れているのだろう。隣で深い寝息を立てて眠っている。
時期に夜が明ける。
ウェリーは目を開けた。
そっと隣で眠っている美しい男性を見下ろせば、整った双眸は閉ざされ、睫毛の紗が頬にかかっている。
「せめて最後に……もう一度、抱かれたかったな……」
しかしそれはもう無理だ。
ウェリーはそっとベッドを抜け出すと、着るものを選ばず、チュニックにズボンという軽装で屋敷を出た。
……外は寒い。
凍えそうなのは身体だけではなく、心もだ。
たった今、屋敷を出て庭に降りただけなのに、もうゼフィールの力強いぬくもりを欲している自分が居る。
「ゼフィール……ゼフィール……っひ、っふ……」
ここはまだ安全ではない。ゼフィールや屋敷の誰かに見つかってしまう恐れがある。
ここでしゃがみ込んでいてはいけない。そう思うのに、ウェリーの体は彼の元から離れたがらない。
とうとう膝を抱えて蹲ってしまった。
(どうしよう。僕にはこんな暇はないのに。離れなきゃいけないのに……)
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