自分の容姿が誉められるものではないことくらい、よく知っている。 　しかも自分はオメガの性で、世間からは蔑(さげす)まれた存在だ。当然金も持ち合わせがない。 　彼と出逢った当初、ゼフィールは人間の生き血を飲む化け物だという噂を耳にしていた。そうして食事を終えた後の亡骸を、大きな屋敷の庭にある、これまた見たことのない大きな木の下に埋めてしまうのだと。 　その証拠に、その木の樹液は人間の血が流れるのだ。 　だからてっきり自分は彼の食料になるとばかり思っていたのだが、その実は違っていた。 　彼が植えた木は、異国の友人から貰い受けた竜血樹という木らしく、その樹液はもともと赤い色をしているらしい。なんでも怪我をした時などによく効く薬になるとか――。 　ともすれば、彼が自分を人買いから買った理由が思いつかない。