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第5話

「あんさ、なに食って帰る?」 「んー、どうする?」 待ち合わせた弘樹と一緒に昼食のセレクトを考えながら電車に乗り、結局オレたちは駅前のファーストフード店へと立ち寄ることにした。 今までは、学校帰りにお店へ立ち寄ることなんてなかったのに。ルールを守り、一度帰宅してから近所の駄菓子屋さんとかに行ったりしていたオレと弘樹が、今は制服姿でニ人で向かい合って食事をしているなんて。 ……高校生って、なんか自由だ。 「ここのポテト、俺すげぇ好き」 規制されていた事柄を頭に浮かべ、現状に浸るオレの脳内をおいてけぼりにする弘樹のひと言がやってきて。声を出した弘樹に視線を向けたオレは、弘樹の顔を見て苦笑いを零す。 付属のソースにポテトをつけて、満足そうにポテトを食べている弘樹は昔からご飯のことになると子供っぽい。それはよく知っていることだけれど、高校生になったっていうのに、頬にソースをつけていることに気づかないのはどうかと思うから。 「もう、弘樹。頬んとこ、ソースついてる」 オレはそう言うと弘樹の顔に手を伸ばし、トレーに乗っていた未使用のフキンでソースを拭き取ってあげた。 「あ……っと、ありがと」 俯いて小さく感謝の言葉を洩らす弘樹と、そんな弘樹の姿がらしくないと感じたオレ。二人を包む空気感が微かに変わり、その原因はらしくない弘樹のせいだと思ったオレは首を傾げてしまうけれど。 「その顔、反則だから」 一瞬、しっかりオレに視線を向けたはずの弘樹はすぐに視界からオレを消して。普段は見せることのない真面目な顔をして呟いた弘樹に納得がいかないオレは、頬を膨らませながら反論する。 「反則って、意味わかんないよ。オレがせっかく、親切でしてあげたのに」 「そうじゃなくて……まぁ、いいや。とりあえず、これ食って帰ろうぜ」 反論も虚しく、オレはあっさり弘樹にあしらわれた。なんだか、今日の弘樹は本当にらしくないなって。食事中は、終始そんなことを感じていたけれど。 駅から家までの帰り道では、違和感を覚えることがなく、弘樹は通常モードで満足そうにお腹を撫でながら歩いていく。 「あー、腹いっぱい。俺、今からなら90 分フルで走れそう。ついでにゴールも奪えるな、俺の圧勝よ」 「弘樹ってさ、本当にサッカーのことしか頭にないよね。ご飯食べると、体力ゲージ全回復するみたいだし」 「なんだよ、俺はゲームのキャラじゃないからな。セイはもう少し食ったほうがいい。俺みたいに大きくなれねぇぞ、大人の男になるんだろ?」 「そうなりたいんだけど、なかなか成長期がこないんだもん。そのうち、オレは弘樹より大きくなるんだから」 弘樹よりも大きくなれるかは不明だけれど、まだまだこれからな成長期に希望を持っても許されるはずなんだ。 低身長がコンプレックスなオレの心情なんて、それなりに高身長な弘樹に理解はされないだろうけれど。

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