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第101話

「もうっ、白石さんも兄ちゃんも大っ嫌いです!」 俺が取った行動は光に対しての悪足掻きだったのだが、恥ずかしさがキャパオーバーしたらしい星は俺から離れて頬を膨らませる。 こんなに愛らしい、大嫌いを受け入れる身の気持ちにもなってもらいたいものだけれど、それにしても今は何より悪魔が邪魔で仕方がない。 「うっわぁー、ユキちゃん速攻でフラれてるぅー!!あれだけイチャついてたのに、フラれるとかマジウケるぅー!!」 「……光、お前ホントうぜぇーんだけど」 腹を抱えて笑う悪魔と、頬を膨らませ拗ねる天使。捉え方によってはどちらも悪魔かもしれないが、星の場合は小悪魔といったところだろう。 「星、ごめんって。今度お前が食べたいものなんでも作ってやるから、嫌いとか簡単に言うな」 傷ついているわけではないし、本心から嫌いと言われているわけじゃないことを理解はしている。けれど、ご機嫌斜めの星の機嫌を真っ直ぐに整えてやるため、俺は手料理で星を誘った。 「白石さん、それ本当ですか?」 「おう、約束してやるよ」 やっぱり、コイツは料理に弱い。 膨らんでいた頬は元に戻り始め、星は俺に嫌いだと告げたことも忘れて食べたい物を考え出す。 「えっと……じゃあ、今度はナポリタンが食べたいです。下に薄焼き卵があってとっても美味しいの、です」 「あぁ、それ母さんの得意料理の一つだね。いくら料理が得意なユキちゃんでも、母さんの味に勝つのは難しいと思うけど。頑張ってね、ユキちゃん」 キラキラと輝きを取り戻していく星の瞳は、既に期待に満ちているように見える。鉄板ナポリタンのご注文を頂いたのはいいものの、俺の家には鉄板皿がない。星の望みならもちろん買い揃えるが、その前に気になることが一つあって。 「今回は俺が強引に泊まらせたけどよ、お前んとこの親にはどう説明したらいいんだ。泊まりのたび、毎回友達の家っつーのはよくねぇーだろ」 「あー、ソレは俺も思ってたとこ……せい、ユキちゃん家に泊まるのは構わないけど、母さんに嘘つくのは良くないよ。俺の友達の料理上手な人から調理実習してもらうためって、母さんには俺からも話しておくから嘘はつかないように」 気がかりなことはどうやら光も変わりなかったらしく、光は忠告とアドバイスを同時に告げていく。その言葉に頷いた星は柔らかく微笑み、目尻に溜まっていた涙をゆっくりと拭っていた。 「兄ちゃん、白石さん、ありがとう……オレ、まだよく分からないことばっかだけど、兄ちゃんと白石さんがいてくれて本当に良かった」 俺と光の賭けに巻き込まれた星だが、コイツの素直さに助けられたのは俺と光の方だろう。結果良ければすべて良し、と……そんな簡単な言葉で流してしまえるほど、俺たちの関係は容易いものではないけれど。 まだ始まったばかりの初恋は、光のとんでもないアシストで幕を開けたのだった。

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