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第147話
【星side】
「……ん、苦しぃ」
とてつもない息苦しさで目覚めたオレは、ぼんやりと目を開ける。
オレは、昨日黒猫のぬいぐるみのステラと一緒に寝たはずなのに。今のオレは、ステラを抱くことなく眠っている白石さんの腕の中で、ギュッと強く包まれていた。
オレを抱きしめながら、気持ち良さそうに眠っている白石さん。どうやらこれが、オレの息苦しさの原因だったらしい。
オレ、白石さんの抱き枕みたいだなって。
寝起きの頭で思うことは、ふわふわとしていてどこか暖かく感じる。
オレが動いて起こしちゃうのも悪いし、とりあえずオレはこのままじっとしていよう。
そう思っても、一度起きてしまったら少しだけ暇に感じる時間。オレはそんなときを利用して、昨日の出来事を振り返ってみることにした。
まず、朝早くから白石さんがお迎えに来てくれて。それで、そのあとは白石さんのお家で弘樹のことを話して。白石さんのことが好きだってハッキリと自覚したオレだったけれど、気持ちを上手く伝えることのできないまま、オレたちは買い物へ行ったんだ。
白石さんとのショッピングは新鮮なことばかりで、楽しかった。帰宅後は、白石さんが作ってくれた美味しいナポリタン食べて、人生初めてのバブルバスを体験して。
それで、それから。
お風呂でのコトを思い出したら、オレは恥ずかしさに勝てなくなって考えるのをやめたけれど。
視線を逸らした先にあった白石さんの首筋に、くっきりと残る歯型を見つけてしまったんだ。
そこまで大きくはないものの、全体は赤く腫れていて痣になっている部分もある。白石さんは何も言わなかった気がするけれど、これはかなり痛々しい傷だと思った。
そこまで強く噛んだ覚えは、ない。
たぶん、ない……けれど、目の前にその証拠は残っている。
申し訳なさは、もちろんあるんだ。
白石さんが目覚めたら、ごめんなさいって素直に謝ろうと思っている。
でも、だけど。
オレが付けた痕がついてる、オレだけの白石さんが愛おしくて。この痕が、ずっと消えなきゃいいのにって……そう感じたオレは、独りで頬を染めていく。
この感情を独占欲と呼ぶのなら、オレは弘樹の話が少しだけ分かる気がした。痕を残したくなるほどの想いは、相手を好いてる現れだ。
兄ちゃんのこと、弘樹のこと。
オレのことを最大限に考えた上で、白石さんはオレにアドバイスしてくれた。
その優しさも、この腕の温かさも。
とってもかっこいいのに、大きなぬいぐるみと一緒に生活しているところも。ちょっぴり照れた横顔も、料理上手なところも。意地悪なのに優しくて、あとは、その、えっちなところも。
今、オレが知っている白石さんのすべてに惹かれていて、恋に落ちた感覚は消えないままだから。
まだ起きそうにない白石さんを見つめ、溢れ出した気持ちを伝えようと、口を開くオレの鼓動はうるさいけれど。
チャンスはきっと、今しかないから。
「……大好きです、白石さん」
素直になれた呟きとともに、オレは白石さんの頬にキスをし、ぎゅっと強く抱きついたんだ。
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