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第148話
「ありがと、星くん」
「……え、ウソ」
「俺も好き、お前のコト」
オレにそう言って、楽しそうに目を細めて口角を上げて笑う白石さん。朝からこの笑顔は、心臓に悪いからやめていただきたい。
……と、いうより。
「いつから起きてるんですかっ!!」
「んー、お前が俺にキスして、抱きついてくるチョット前から」
それじゃあ、白石さんはオレが起きたのとほぼ変わらないタイミングで、実は起きていたんじゃ……いや、待ってくださいよ、白石さん。
「……狸寝入り、ですか?」
「俺、得意なの」
得意とか、そういう問題じゃない。
白石さんが寝ていると思ったから、オレは重大発表をこっそりしたというのに。
両思いだと分かったのは嬉しい限りだけれど、イメージしていた状況とは違いすぎる今に、オレは動揺を隠せなくて。
「さっきの言葉は、聞かなかったコトにしてくださいっ!! やっぱりオレ、白石さんのことなんかっ……ンッ…ぁ」
羞恥心に任せて、前言撤回をしようと試みたけれど。言いかけた言葉は、白石さんのキスによってあっさりと遮られてしまった。
「はぁっ…ッ、ん」
触れ合う唇は温かくて、後頭部に回された手の感覚が心地いい。オレの呼吸に合わせるように、ゆっくりと下りてくる白石さんの指先がオレの耳を掠めたとき。
唇を離した白石さんは、柔らかなキスに流されたオレを見てニヤリと笑った。
「……嫌いな俺にキスされただけで、こんなエロい顔できるお前も好きだから心配すんな」
……もう、なんなのこの人。
「朝から、こんなのやめてくださいっ!!」
本当は、嫌じゃないんだけれど。
オレはもう、恥ずかしくて恥ずかしくて……白石さんの雰囲気に呑まれてしまいそうになったとき、オレはグッと白石さんを押し退けてしまった。
「ッてぇ……」
首筋に手を当て、小さく声を洩らした白石さん。どうやら、オレの手が白石さんの首筋の傷を掠めてしまったらしい。
少し眉を寄せ、軽く唇を噛む白石さんの表情にオレは見惚れてしまう。
……この顔、オレすごい好きかも。
どこから湧き上がった感情かは、自分でもよく分からない。でも、告白の恥も忘れるくらいに、オレは白石さんを見つめて手を伸ばす。
「あ、あの……大丈夫、じゃないですよね。首筋、すごい痕ついてるから……ごめんなさい、オレのせいです」
そう言いながらも、オレの指は白石さんの首筋にそっと触れていく。
「あ?……あぁ、大丈夫」
大丈夫だと笑って、謝るオレの頭を撫でてくれる白石さん。そんな優しい白石さんの首筋に触れているオレの指に力が入り、ソレが痛々しい痕に爪を立てた。
「イッ……星っ、お前ナニすんだよ」
白石さんの反応に満足したオレはきっと、危ない笑顔を浮かべているに違いない。
「やっぱり、痛いんじゃないですか。ウソ、ついちゃだめですよ?」
「爪たてられたら、誰だっていてぇーよ」
「オレ、やっぱり白石さん大好きです」
オレも、白石さんも。
この気持ちに、ウソはつけないから。
お互いの想いを知ったオレたちは、どちらかともなく口付けを交わしたんだ。
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