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第149話
「んっ、はぁ…ンッ…」
白石さんのキスは、苦しくて、甘い。
頭が、身体が、ゆっくりと溶かされてゆくような感覚にオレは酔いしていくけれど。
チュっと音を立て離された口元は、いつなくニヤけている気がするから。少しだけ、ほんの少しだけ悔しさを感じながらもオレは白石さんを見つめた。
「俺に噛みついて、その痕に爪まで立てて楽しい?」
問われた言葉の意味を考え、ニュアンスが異なるような気がしたオレは、斜め上の方を見ながら話しだす。
「いや、えっと……楽しいというより、愛おしいって感覚のほうが近いかも、です」
上手く言葉にできないけれど、どうやらオレの気持ちは白石さんに伝わったようで。オレの言葉にご満悦な様子の白石さんは、とても嬉しそうに笑ってくれたのに。
「お前、ヤバイわ。星くん、すっげぇー可愛い変態さんじゃねぇーかよ」
オレに、変態だと言ったんだ。
「……へ?」
予想外の発言をされ、オレは首を傾げてしまう。愛おしいと思うことと、変態なことがどうしたら繋がるのかオレには分からない。
「噛みつきたいなら、噛んでいいんだぜ?」
「でもっ、白石さん痛いですよ?それにオレは、変態なんかじゃないです」
確かに、白石さんに噛みつくのは好きかもしれないけど。なんだか、納得できないまま話は進んでいくんだ。
「痛がる俺を見て愛しくなるって言ったのは、何処の誰だよ?」
「んー、オレ?」
「分かってんじゃん」
「いや、でもそれと変態は関係なくないですか?痛がってる白石さんというよりかは、さっきの白石さんの表情がすごく好きだなぁって思っただけで……別に、オレは痛がってる白石さんが好きなわけじゃないと思うんです。んー、なんというか、オレが付けた痕だから意味があるというか。オレだけの白石さんって感じがして、だから愛おしく感じるんだと思うんです」
何が言いたいのか、自分でもよく分からなくなって。でも伝えたくて、一生懸命に話し続けるオレの頭を白石さんは撫でてくれる。
そして。
「色々考えるより、もう一回噛んでみたほうが早いじゃねぇーの。ココ、噛んでみろ」
白石さんはそう言って、Tシャツを軽く引っ張りオレに右側の鎖骨を見せてきた。
とっても綺麗な白石さんの鎖骨を前にして、オレはごくりと唾を飲む。骨と皮膚の間にオレの歯が刺さったら、きっと痛いと思った。でも、すごく噛みついてみたいのも事実で。
「……本当に、いいんですか?」
「どーぞ、星くん」
最終確認するようにオレが尋ねると、白石さんはふんわり笑ってくれたから。オレは白石さんの綺麗な鎖骨に歯を立てて、ソコにかぷっと噛みついた。
一瞬、白石さんがピクリと動いた感じがし、小さく息が洩れる。
「ッ、どうだ?」
「んふふふぇふ」
返事をしてみても、噛みついたままじゃ言葉にならない。そんなオレの返答にさえ、白石さんは優しく笑って受け入れてくれたんだ。
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