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第150話

オレが噛んだ白石さんの鎖骨は、オレの歯型と吸い付いた真っ赤な痕が残った。オレだけの白石さんが増えていく喜びに、なんとも言えない高揚感がオレを満たしていく。 「……オレ、幸せです」 ベッドに横になりながら煙草を吸う白石さんにオレは腕まくらをしてもらって、さっき付けたばかりの鎖骨の痕を愛おしく撫でている。 「お前は、きっと噛みグセがあんだな……キスマより派手に痕ついて、いいんじゃねぇーの。昨日寝る前、俺にいっぱいキスマーク付けたいとか言ってたしな」 「え、オレ昨日そんなこと言ってました?」 「言ってた。弘樹がぁ、なんちゃらかんちゃらって。俺がなんちゃらかんちゃらってなんだってお前に聞いたけど、そんときはもう寝てた」 昨日は色々あって夢心地のまま意識を手放したように眠ったからか、白石さんに言われたことは思い出せないけど。 「えっと、この前弘樹がキスマークは独占欲の象徴とか言ってて……オレも白石さんを独り占めできたらなーって思ってたから、そんなこと言ったのかもです」 白石さんは吸っていた煙草の火を消すと、空いた手でオレの頭を撫でてくれる。 「もう充分、独り占めしてると思うぞ」 「でも白石さんは女の人と、いっぱい経験あるんですよね……来るもの拒まずだったって、兄ちゃんから聞きました」 白石さんはきっと、昔からモテモテの人生だったんだろう。ランさんだって、白石さんのことが好きだって言っていたくらいだから。 「……まぁ、それなりにな」 もしかしたら今もたくさんの人に、言い寄られているのかもしれない。そう思い尋ねたオレの質問に、白石さんは珍しく言葉を濁したんだ。 「それなりって、曖昧すぎじゃないですか?」 オレは、白石さんの全てを知りたいのに。 せっかく両思いになれたのに、こんなにすぐに隠しごとのような言い方をされるとムカついてしまうから。 ……決めた、お仕置きしよう。 オレばかりが恥を感じる必要はないし、オレが白石さんに意地悪をしたってきっと神様は許してくれる。 そんな幼稚な考えで、オレは白石さんの鎖骨に残る歯型の痕に、遠慮なく爪を立てていく。 「あ、おい待て、こらッ……てぇー」 やっぱり、この表情好き。 いつも余裕がある白石さんが、ほんの一瞬だけ魅せる息が詰まるような感じ。 「白石さんは、オレだけのモノです」 少しだけ、白石さんのマネをして言ってみた。 「お前、やっぱり光の弟だ」 「今は、兄ちゃん関係ないんですぅー。それより、それなりにってなんですか?ちゃんと説明してくださいっ!!」 「……お前がどーしても聞きたいんなら、俺は別に構わねぇーけど」 そう言って、話だした白石さんだったけれど。 白石さんの過去の女性事情にオレは盛大に妬きまくり、白石さんがすべて話終わるころには、白石さんの身体中、オレの歯型と爪痕まるけになっていたんだ。 ……でもそれは、ナイショのお話。

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