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第151話

……はぁ、寂しい。 こんな気持ち、オレは今まで感じたことがなかったのに。 白石さんとのんびりした朝を過ごしたあと、家の裏の公園までオレを送り届けてくれた白石さんは、じゃあなと言って行ってしまった。 今日は午後からバイトがあるからって、また連絡するからいい子で待ってろ、と。バイトへ行く時間ギリギリまで、白石さんはオレと一緒にいてくれたのに。 もうすでに寂しいなんて、オレはいつからこんなに寂しがり屋になってしまったんだろうと思いつつ、家に帰って自分の部屋のドアを開けた。 「……兄、ちゃん」 自分の部屋にいたのは、ジャージ姿で前髪だけを縛ってオレのベッドでゴロゴロしながらマンガを読んでいる兄ちゃんだ。 完全オフモードの王子様の姿を眺め、オレは占領されているベッドじゃなく椅子に腰掛ける。 「ただいま、兄ちゃん」 「もっと遅くなると思ってたのに、思いの外早かったね?」 「白石さん、今日午後からバイトだから」 「ユキちゃん今日もバイトなの?相変わらず忙しい人だねぇ……あ、そうそう。まだ、ユキちゃんには話してないんだけど今度のゴールデンウィーク、お泊り行かない?」 思い付きなのか、いきなりの話に驚くけれど。兄ちゃんがオレの部屋にいた理由が納得できたオレは、声を出さずに頷いた。 「やった!あのね、せいとユキちゃんと俺と優の四人で、優のお家の別荘に行きたいなぁって思ってるの」 「ん……優さんって、誰?」 「あれ、ユキちゃんから優の話聞いてない?」 次々に話題が溢れてくる兄ちゃんとは違い、オレは一つ一つを確かめるように兄ちゃんに尋ねていく。 「あ、インテリ眼鏡さん?」 「ソレ、ユキちゃんらしい説明の仕方だね。優はね、俺の中学んときからのお友達でユキちゃんも高校から一緒だよ。んーと、中学校の近くのバス停辺りに、保育園と一緒になってる大きなお寺があるの知ってる?あそこのお寺が、優のお家」 「……えっ?!」 兄ちゃんは白石さんといい、なんて人と友達なんだろう。 「優はユキちゃんみたいに喋べるタイプじゃないけど、悪い人ではないから大丈夫。ちゃんと優にはせいのことも、ユキちゃんのことも話してあるから」 「いやでも、白石さんに訊いてみないと」 「ユキちゃんには、今日の夜にでも俺から話してみる。放っておくとユキちゃん休みのあいだ、バイト詰めになるから。行こうと思ってる優のお家の別荘は海の近くだから、きっと楽しいよ!ね?一緒に行こう!ユキちゃんの運転で」 「……へ?」 「優に運転させると、人が変わってめちゃめちゃ荒い運転するから、せい乗せるの怖いし。ユキちゃんの車の方が荷物乗るし、せいもユキちゃんが運転してる姿好きでしょ?」 「好き、だけど」 「色々と詳しい話はユキちゃんとするけど、せいは行くの決定でいいね。ユキちゃんはせいが行くって言ったらきっと、死んででも行くって言うから大丈夫」 それは、大丈夫じゃないと思う。 兄ちゃんの強引さに呆れつつも、オレは少しだけ今度のゴールデンウィークが楽しみになった。

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