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第153話

「なぁ、どんな子なんだ。てか、お前がそんなに惚れ込むなんて余程だろ。めちゃめちゃ可愛いとか?綺麗とか?あ、すげぇセックス上手いとか?」 「康介、お前バカだな。知ってたけど」 「奢るんだから教えろよぉー、付き合ってんだろ?」 「奢るってお前、ドリアとドリンクバーでなんで話さなきゃなんねぇーの。高校生でも、もっといいもん食ってんぞ」 「奢りは奢りじゃんかぁー、なぁ、白石ぃー」 奢りを条件にした俺も、バカだったのかもしれない。引き下がらない康介にイラつきつつ、俺は星のことを考えて。 「年下で、すげぇー可愛い子。黒髪のショートヘアでボーイッシュ。控えめで、素直で、恥ずかしがり屋で、照れ屋さん。料理上手ないい子だ」 ……ボーイッシュ、ボーイだけどな。 俺は心の中で自分にツッコミを入れたが、その声は康介には届かない。 「え、そんなコがそんな痕付けんの?話聞く限りそんな大人しそうなコが、その痕だぜ?結構エグいでしょ。お前、やっぱり昨日は激しい夜を過ごしたんじゃん」 「だから激しくねぇーよ、そもそもヤってねぇーからな」 「でもさ、俺は逆にその痕をヤらずに付けさせることができる白石がすげぇと思うよ。んで、いつから付き合ってんの?」 康介にそう言われ、よくよく考えたら好きと伝える前にキスをして。今日の朝、初めてお互いが好きだと伝えたことに気が付いた。 「いつから、だろーな。分かんねぇーわ」 本気で首を傾げた俺を見て、康介が手を叩いて爆笑する。 「ウケる、マジでわかんねぇの?」 愛しているし、愛されているのには違いないと思うのだが。付き合っているのかと訊かれると、何故かしっくりこない。今までの俺の付き合うという行為が、あまりにも軽いものだったからだろうか。 「てか、付き合うってなんなんだ。俺、正直今までアイツと出逢うまで、好きだと思って付き合ったこと一度もねぇーから、付き合うって分かんねぇーよ」 「確かに。そう言われると、よくわかんねぇかも」 さっきまで笑っていた康介だったが、俺の話に真剣な表情になる。 「だろ?」 「でもさ、コレってどちらかというと男の意見だよな。女って結構、付き合った記念日とか気にすんじゃん」 記念日の価値観は、人それぞれだと思う。 けれど、星も俺と同じ性なワケで。 康介の基準が、付き合ったこともない女なところは単純にすげぇーと思った。 「大事なのはお互いの気持ち、だろ。俺が言えた義理じゃねぇーけど、軽い付き合いはもうしたくねぇーから」 「じゃあ相手の女が好きな日を、付き合った記念日にすりゃいいじゃん。それか、今日からちゃんと付き合おうかって話した日とか。とりあえず相手の女が喜べば、それでよくね?」 「あー、お前に訊いた俺がバカだったわ」 煙草を吸いながら考えてみたが、納得いく答えに辿り着くことはできなかった。

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