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第154話

康介とはファミレスで別れ、帰宅後にシャワーで汗を流して。のんびりと一服でもして寝ようかと思ったとき、やけにうるさくスマホが鳴った。 「……ナニ」 『ユキちゃん!ゴールデンウィークに、優の別荘まで連れてって』 とりあえず電話には出たものの、光のテンションの高さと話の主旨に溜め息が漏れる。 『ゴールデンウィーク、せいも連れて一緒に優の別荘で遊ぼうよ』 「アイツん家って、別荘まであんのか?」 優が寺の息子なのは知っているが、別荘のことは初耳だ。 『別荘っていうか、元々は優ママのおじいさんのお家。リフォームして、キレイになったんだって。昨日たまたま優のお家にお邪魔したときにね、優のパパが休みの間は好きに使っていいよって言ってくれたんだ。後々ゲストハウスとして宿にする予定だから、遊びに行っておいでって』 「行くのはいいけど、なんで俺が連れてかなきゃいけねぇーの?」 『優の運転で、もしせいが死んじゃったらどうするの?優が優パパの外車譲ってもらえたのは、運転荒すぎて事故ったときに少しでも死ぬ危険を避けるためだよ?』 そう、だった。 あのインテリ眼鏡は、運転手になると性格が一変する。 「……俺が運転する」 『さすがユキちゃんっ!日程どうするかまだ優ともしっかり話し合えてないんだけど、ゴールデンウィーク前にできれば会って話したいなって、時間取れる日ある?』 「大学とバイトで休みないから、時間取れねぇーと思う」 トントン拍子で話が進み、そもそも俺に拒否権などないのだろうと思い始めたころ。 『じゃあ、来週の土曜の夜にランちゃんのお店で会おうね。その日の夜しか優が予定空いてないから、せいも一緒に連れて来て。どうせ金曜の夜から、せいはユキちゃん家にお泊まりでしょ?』 全ての主導権は、この金髪悪魔の手にあることを俺は思い知った。なんでまだ星にも伝えてない俺の予定を、光は知ってんだ。 「最初から決まってんなら、わざわざ時間取れるか聞くな。個室取れるように、ランには俺から連絡入れとく」 『ユキちゃん、大好きっ!』 ブチッとちぎれたような音声が聴こえ、光の勝手で通話が終了したことを知る。相変わらずなヤツだと思いつつも、俺の中で一つの疑問が生まれた。 ……優って、俺と星の関係知ってんのか? 光はもちろん知っているが、優には話していないどころか、ココ最近は連絡すら取っていない。 優とは高校のころからの腐れ縁で、光同様に過去の俺の行いを知られているから……今更、俺が誰とナニしてようと動じない男だとは思うが。 光が優にウソの虚実をひけらかして楽しんでいないか、ソレだけが俺の気がかりな部分だった。 ともあれ。 急ではあるが、ゴールデンウィークに星と過ごせる時間を確保できたことは間違いない。 それだけでも充分な収穫だと思い、俺はランに連絡を入れてから眠りに就いたのだった。

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