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第155話

週も最後の金曜日の昼中、今週は過ぎていく時間がかなり長く感じた週だった。それなのに、なんで今日に限って、俺は午後からの講義を受けなきゃならないんだ。 そう思っても、単位取得のためだから仕方がない。俺は一応大学生だし、バイトばかりしていられないのが現状だ。 そんなことを考えつつ、講義が始まるまでの時間潰しのため、中庭のベンチで煙草を吸っている俺に弘樹からLINEが届いた。セイがヤバいことになっていると、しかも画像つきで。 弘樹がキスマークの件で話した時、何かあった時のためにと連絡先を交換したのだが。添付されていた写真は、コックコートを身にまとい、長い前髪をピンで留めている星……の周りに群がる女子生徒たちの、写真。 ……コレは、なかなかにヤバい。 真っ白のコックコートに、グリーンのネッカチーフをして。いつも前髪で隠されている大きな瞳は写真の光の加減か、困り果て少し潤んでいるようにも見える。 ヤバいのは星の愛らしい姿だけでなく、この状況だ。何がどうなっているのか、不明点が多すぎるため、とりあえず俺は弘樹に連絡を入れた。 『……あ、白石さんッスかっ?!セイが女の子たちに囲まれちゃって、ヤバいんッスよ!!』 数回のコール音のあと、ガヤガヤと騒がしい音とともに、弘樹の声が聴こえて。 「弘樹、星に代われ。んで、とりあえずお前が周りに群がる女たちをどうにかしろ」 なんとか状況の把握はできたものの、星の傍にいるのは俺じゃない。何が得策なのかは分からないが、今は星を落ち着かせることを優先した俺は弘樹にそう伝えた。 すると、周り群がる女たちと話ながらも星を誘導する弘樹の声が途切れ途切れに聴こえ、その数分後。 『……えっと、もしもし』 少しだけ静かになったところで、聴こえたのは星の声だった。 「お前、昼休み中にナニしてんの?」 『えっ、ウソ、白石さん……なんで弘樹が、白石さんの連絡先を知ってるんですか?』 「それはまた、時間あるときに説明する。とりあえず星、人気のないとこに移動しながら話して。それと髪、元に戻せ」 『……あ、はい。分かりました』 電話越しの騒がしさが少しずつ遠のいていき、星の戸惑ったような声も落ち着き始めたころ。 「星くん、学校で前髪あげたのか?」 『オレ、先生に注意されちゃって……実習中は不衛生だから髪あげなさいって、実習の時は帽子を深く被ってたから良かったんですけど』 「けど?」 『オレ、先生に用事があって職員室入るときに帽子とらなきゃいけなくて。それで、そのまま廊下を歩いてたら女の子たちに囲まれちゃったんです』 愛らしい瞳にコンプレックスを感じている星が、わざわざ伸ばした前髪をあげなきゃならない理由はなんなのか。ソレを知るために俺が問い掛けると、星はゆっくり話してくれたのだが。 タイミング悪く廊下ですれ違った女たちに捕まってしまった星は、今にも泣き出しそうな声をしていた。

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