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第159話

どうなることかと思ったけれど、午後からの授業は何事もなく終了した。そして、今日は部活がないらしい弘樹とともに、オレは学校から帰宅中。 「……なんか、疲れちゃった」 目の前でチラつく前髪に触れながら、オレは小さく弱音を零してしまう。 今日は色々と、大変な日だったから。 弘樹がパニック状態のオレを見つけてくれたから良かったものの、あのまま救いの手がなかったらオレはどうなっていたんだろう。 「あれだけの女子に囲まれたら、誰だって疲れる。俺もあの人に言われてセイのあとを引き受けたけどさ、ああいうときの女子の迫力ってすげぇよな」 「本当に、あのときはありがとう……けど、なんで弘樹が白石さんの連絡先を知ってるの?」 「あぁ……この前、俺がショップに乗り込んだとき、あの人に、その……俺が、弘樹がセイを守ってやれって言われて。そんで、とりあえず連絡先交換した」 「いつの間に、そんなことを……でも、実行してくれてありがとう。弘樹がいなかったら、オレたぶんあの場で泣いてたと思う」 「いや、俺は別に大したことはしてないから」 そう言って、弘樹は照れ臭そうに微笑んだけれど。白石さんと弘樹の二人で何を話したのか……このとき、オレは素直に聞くことができなかった。 でも、弘樹が同じ高校にいてくれて本当に良かったと思う。西野君も、違う学科の人と友達になれて嬉しいって言ってくれたし。結局、昼休みが終わるまで弘樹と西野君は楽しそうに話していたから。 先生に髪を切るように言われなければ、実習もすごく面白かったし、とてもいい日だったのに。 「……髪、やっぱり切らなきゃダメだよね」 「俺的には、切ってほしくないけど。厳重注意されたとなると、そうも言ってられないもんなぁ」 「横島先生、すごく怖かった。西野君は結構好きみたいだったけど、オレはあの先生苦手かもしれない」 身だしなみが大事なことは分かっているつもりだったから、女子生徒のようにヘアピンで留めてしまえば問題ないと思っていた。 その考えが甘いと言われてしまえば、それまでだけれど。なんだか納得できなくて、オレは不貞腐れてしまいそうになる。 「生徒から人気がある先生だし、オレみたいに顔を隠して生きていたい人間の気持ちは分からないんだろうなぁ……ねぇ、弘樹」 「俺はバカだから、どれが正解かとか分かんねぇけどさ。その先生は過去のセイを知らないし、セイの前髪が長い理由も知らないだろ」 どちらにも理由がある場合、どちらかが意見を譲らなければ平行線のままだ。けれど、オレと先生では立場が違って。 「……なんか、考えるの面倒になってきた。オレ、坊主にしてみようかな」 「ソレは俺が全力で止める。たぶん、俺より王子が許さねぇと思う」 本当は、1ミリもする気がない坊主の話。 でも、オレの話を鵜呑みにした弘樹は、オレの坊主を完全否定して笑っていた。

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