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第160話

坊主は却下されてしまったけれど、髪型くらいで左右されない仏の心は学びたい。そんなことを思いつつ、帰宅したオレは宿題を終え、泊まりの用意をして。 時間丁度に迎えに来てくれた白石さんに連れられて、オレは待ち望んでいた時間を満喫している最中だ。 「白石さん、終わりそうですか?」 煙草を咥え、ブルーライト用の眼鏡をかけて。テーブルに色んな資料を広げながら、ノートパソコンでレポートを作成している白石さん。 「あと、もうちょい」 白石さんは大人びているから、オレはよく忘れそうになるけれど。白石さんは大学生だから、当然勉強時間も必要なんだ。 そんな白石さんの邪魔にならないように。 最小限で最大限の甘え方をしているオレは、白石さんに膝枕をしてもらって。ステラを抱きしめながら、真剣な顔をして作業している白石さんを下からじーっと眺めていた。 白石さんは、瞳の色素が薄いから光に弱くって、パソコンを使う時だけは眼鏡をかけるようにしているらしい。 「星、お前暇じゃねぇーの?」 笑いながらオレの頭を撫でてくれる白石さんは、いつもとは違う眼鏡姿で思わず見惚れてしまう。 「……暇じゃないです。ステラもいるし、眼鏡姿の白石さんを眺めていたいから」 オレがそう言うと白石さんは嬉しそうに笑って、あと少しで終わるから待ってろよってオレのおデコにキスしてくれる。 とっても幸せな時間。 なんでもない、大切な時間。 勉強も、バイトもして、オレと会う時間を作ってくれる白石さんはすごいと思う。その上、オレのために弘樹に連絡先まで教えてくれていたんだから。 色々な好きが重なって、気持ちが膨らんでいく。ソレは、まるで赤い風船のようにふわふわとオレの心の中を漂っている。 ……白石さん、大好きだよ。 照れくさくて声には出さないけれど、オレはステラをオレの隣に転がすと、白石さんの腰に手を回してぎゅっと抱きついてみた。 暇なわけじゃないし、寂しいわけでもない。 ただ、オレが感情に任せて行動しただけだ。 すると、白石さんはそんなオレを引きはがして。ちょっとごめんなと断りを入れ片付けを済ませると、どさっとベッドに腰掛けた。 「やっと、終わった……相手してやれなかったから、寂しかっただろ。星、待たせて悪かったな」 「ううん、そうじゃないんですけど……白石さんのこと、大好きだなぁって思ったら抱きつきたくなったから……その、えっと」 オレは白石さんの隣にちょこんと座り、首を横に振った。そんなオレの頭を撫でてくれる白石さんは、やっぱりとても優しくて。 「これで遠慮なく抱きつけっから、好きなだけどーぞ……っつーより、お前はこっちの方が好みかもしんねぇーわ」 「……うわッ?!」 頭を撫でられ喜んでいるオレを、白石さんは軽々抱き上げる。そうして、オレは白石さんの膝の上に乗せられてしまったんだ。

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