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第161話

ついさっきまで見上げていた白石さんを、今のオレは見下ろしている。といっても、頭一つ分位の差しかないけれど。 「あのッ、その……」 「恥ずかしい?」 白石さんからの問に、オレは首を縦に振った。だって、上目遣いで白石さんがオレを真っ直ぐ見つめているんだ。 こんなの、誰だって恥ずかしいしドキドキするに決まっていると思うのに。白石さんはオレの返答にクスッと笑うと、オレの手を取った。 「嫌だった?」 そう尋ねられながらも、オレの両手はさりげなく白石さんの首に回されていく。羞恥心だけで、オレの体温は簡単に上昇してしまうけれど。白石さんから離れたくないオレは、顔を赤くしながらも首を横に振る。 そして。 「んっ…ぁ」 お互いの鼻先が触れ合い、ゆっくりと重なった唇。温かくて心地の良い感覚が、身体中にじんわりと広がっていく。 オレは会えないあいだも白石さんのことを考えて、こうして触れ合えることを望んでいたのかもしれない。 抱きついたら、離れたくない。 白石さんから与えられる刺激はきっと、オレが自ら欲していたものなんだろうと思った。 「ァ…白石、さ」  その証拠と言わんばかりに、オレは白石さんの襟足に触れて滑らかな髪に指を絡めていく。 ただ、受け入れるだけじゃない口付け。 相変わらず、オレはまだ上手に息継ぎできないから。白石さんはオレの呼吸に合わせて、穏やかなキスを繰り返すけれど。 オレが白石さんの上に跨っているからか、今日はなんだか、オレのペースで白石さんを感じられている気がするんだ。 ゆっくり、ゆっくり。 時間をかけて溶け合うようなキスに、頭の奥が痺れていく。最初は遠慮して、白石さんに体重をかけないようにオレは腰を浮かせていたけれど。 支えている脚に段々と力が入らなくなってきて、オレは白石さんに身を預けてしまった。でも、そんなオレを抱きしめてくれた白石さんはオレの耳に口付けて笑うんだ。 「……この体勢、やっぱ気に入ってんな」 「ん…好き、かも」 素直にオレがそう洩らすと、白石さんの大きな手がオレの髪に触れる。そのまま、掬うように優しく頭を抱えられて。 「ァ、ん…ッ」 深まったキスを受け入れたオレは、白石さんに全てを奪われたんだ。白石さんの優しさに包まれていると、心地良くて安心する。でも、その先にある欲に手を伸ばしたくなるから。 「星」 躊躇う暇も与えないかのように、白石さんはオレの名を呼んだ。ソレに安堵し、オレは瞳を閉じてゆく。 恥ずかしさが、薄れたわけじゃない。 胸の高鳴りが、止んだわけじゃない。 むしろ、その逆だ。 白石さんに戯れるがまま、オレは熱い吐息を漏らすばかりだけれど。 「…っ、ん」 白石さんがオレを求めてくれることが嬉しくて、気持ちが高揚する。こんなにかっこいい白石さんを、オレは独り占めできているんだって……最近知ったばかりの独占欲が顔を覗かせ、そうしてオレをわがままに変化させて。 「白石、さん…ぁ、もっと」 もうすでに蕩けている頭で、オレは白石さんを求めて呟いたんだ。

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