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第171話
白石さんから笑顔を向けられ、オレはホッと胸を撫で下ろしたけれど。
「ランちゃんっ!見て、変態っ、変態がいるッ!!」
「もうっ、雪夜ったらエッチねぇ」
オレたちに関係ないところで騒いでいたはずの兄ちゃんとランさんに、どうやら白石さんは捕まってしまって。オレは自分が言われてるわけじゃないのに、恥ずかしくなって俯いてしまう。
でも白石さんは、恥じらっているオレとは違ったんだ。
「ラン、お前はそろそろ仕事しろ。俺らに合わせて、遊んでる暇なんかねぇーだろ。んで、とりあえず光は座れ。優、あとは頼んだ」
文句を言う素振りもなく、至って冷静に場を収める白石さん。
そんな白石さんの言葉に、頷いたのは優さんだった。優さんに後ろから抱きしめるように捕まえられた兄ちゃんは、抵抗することもなく優さんの腕の中にすっぽりと収まって。
兄ちゃんは優さんを見つめると、とっても綺麗な笑顔を見せて……優さんの横に、ちょこんと大人しく座ったんだ。
それは、オレが初めて見る兄ちゃんの顔だった。優さんを見る兄ちゃんは、驚くほど綺麗で。兄ちゃんは優さんと本当に仲がいいんだなって、オレは思ったんだ。
「優がいてくれると、光が大人しくて助かる。俺は光の面倒見れねぇーからな、優じゃねぇーと無理」
白石さんがそう呟くと、何も言わなかった優さんが微かに笑った気がした。
「うん、全員揃ったね」
来店してからというもの、一番テンション高く騒いでいたのは兄ちゃんのはず……だけれども、なにはともあれ四人が着席できたのはいいことだと思う。
オレは、白石さんの隣で。
兄ちゃんは、優さんの隣で。
向き合うように座ったオレたちに、ランさんはにっこり笑うと、ゆっくりしていってねとウインクをして静かに部屋を出て行った。
パタリと閉まった部屋の扉と、訪れた沈黙。
まるでクールダウンするかのように、室内には穏やかなBGMだけが流れていて。
オレの向いにいる兄ちゃんは、言わずもがなとても綺麗だった。店内のライトに照らされた金髪は、本当に光り輝いている。
そんな兄ちゃんの隣には、優さん。
オレと同じ黒髪だけれど、しっかり整えられた清潔感ある髪型と、どう見ても冷静沈着を表す眼鏡が印象的。
そして、オレの横には白石さんがいる。
独特の気怠いオーラがいつも以上に醸し出され、セクシーな雰囲気が増しているように思う。白石さんのかっこよさが引き立つ横顔も、緩く結ばれた髪も、オレは大好きだけれど。
……オレ、こんなにすごい人たちと一緒にいて良いのかな。
みんな歳上だから、当たり前なんだけど。
オレ以外の三人ともが大人に見えて、それぞれの個性が最大限に溢れて出いるから。
子供な自分が情けなくなって、とてもちっぽけに思えて。誰もオレを責めていないのは分かっているつもりなのに、心が寂しくなる。
一緒にいるのに孤独を感じるのは、きっとオレ自身に自信がないからだ。でも、この感情をどうしたらいいのか分からなくて。
オレは無意識のうちに、隣に座っている白石さんの服の袖をきゅっと引っ張っていた。
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