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第179話
「星には、コイツには話してやんねぇーの?」
俺が今、一番気にしている問題。
今は眠っている星が、この二人の関係を受け入れられるかどうかだ。
俺との関係ですら、かなり早足で駆け抜けきたというのに。幼馴染の弘樹からは告られて、兄とその友人が恋仲で、しかも同性だと知ったら……星がキャパオーバーするのは、目に見えている。
「そのうち、様子をみて、かな。今はまだ、ユキのことで頭いっぱいみたいだし……でも、少しずつ話していけたらとは思ってる。俺、もうお兄さんやるもの疲れたし」
光の企みの意図が露わになり、ただの思い付きでゴールデンウィークの話をされたわけではないことを知る。
「だから今回の泊まりに、俺たちを誘ったワケか。なんかあるんじゃねぇーかとは思ってたけど、そう大したコトでもなかったな」
お互いが愛し合える関係なら、それ以上のことなど求める必要はない。それはきっと、俺の友人二人も同じことなのだろうが。
「それよりさ、ユキちゃんってせいとどこまでシたの?」
顔色ひとつ変えずに、今日何杯目かわからないアルコールを口にする光。
「ドコまでもナニも、なんもしてねぇーよ……って、それは俺よりお前らだろ。やっぱ、ヤることヤってんのか?」
「ソレ、ユキには関係ないでしょ?」
「で、星君とはどこまでシたんだ」
「優、お前もか。だから、なんもしてねぇーって何回言えば理解すんだよ」
この二人、話のすり替え方がえげつない。
光と優が、どっちがどっちで、どこまでヤってんのか……俺はもう、考えるのをやめたけれど。
本番行為は一切していないと、その意味を込めて告げた俺の言葉を悪魔たちは信じない。
「ねぇ、ユキちゃん。せいと何もしてないなら、さっきからチラッと見えるヤバい痕はなんなの?」
「あぁ、首のコレか……強いて言うなら、星の嫉妬の痕。過去の女の話をしろって星に言われたから、正直に全部話してやったらこうなった。コレでも薄くなったほうだからな、もうヤバくねぇーよ」
「雪夜が健全だと、ソレはソレで気持ち悪い」
「ユキちゃん、本当に何もしてないの?何もしてなくて、そんな痕をせいが付けるとは思えないんだけど」
光はジンをロックで飲みながら、カラカラとグラスの中の氷を溶かしていく。光ですら知らない星の悪戯、手の甲に薄っすら残る歯型も俺だけの証。
「コイツ、噛みグセあんだよ。好きなように噛ませてやってるから、俺の身体中傷まるけだ……まぁ、キスマより派手でいいだろ」
「せいってすごい恥ずかしがり屋で照れ屋さんだけど、ユキちゃんの前では意外と大胆だったりして」
近からずとも遠からずって、とこか。
「雪夜は、星君から愛されているのだな。光の話を聞く限りでは、雪夜が勝手に溺愛しているだけだと思っていたが、意外にそうじゃないのかもしれない」
落ち着いた声でそう言った優は、光の髪に優しく触れる。そして、これ以上は飲むなと言って光に釘を刺していた。
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