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第180話
すっかりランの店に長居してしまった俺たちは、それぞれ愛しの相手とともにランの店を後にした。
今度あの面子で集まるのは、ゴールデンウィークだ。
俺と出会う前から、関係があったらしい光と優。思い返せば、あの二人は高校入学当初からアホだったかもしれない。
ただ、やはり同性愛だと俺が知らない障害がいくつもあるんだろうと。突然の友人からのカミングアウトで、思い知らされたのは事実だ。
俺は、あの二人のようにシークレットな関係を保てそうにない。弘樹には、すでに俺と星の関係がバレている。
……ってか、なんでコイツは起きねぇーんだ。
ランの店を出るとき、お姫様抱っこで車に乗せて。その後、車から家までをまた抱っこして運んで……そして、今は俺のベッドの上。
結構な移動距離があったのにも関わらず、星は一度も起きることなく幸せそうな顔をして今もぐっすり眠っている。
愛らしい寝顔を見つめているのも悪くはないが、少しだけ悪戯を仕掛けたくなるのが男心というもので。
星の髪に触れて、頬に当たる数本の毛束を耳にかけてやる。とりあえず、露わになった額にキスを落とそうかと……そう思って俺が動いた瞬間、スマホのバイブレーションが鳴った。
着信は、ランからだ。
『雪夜、星ちゃんいるかしら?』
「いるけど、ランの店を出る前から眠ったまんまで今も爆睡中」
『あら、寝てるのね。なら雪夜から星ちゃんに伝えてちょうだい。昌ちゃんに話ついたから、髪切らなくても大丈夫よって。本当はお店にいる時に直接伝えたかったんだけど、今日は色々と忙しくて、ごめんなさいね』
「わかった、伝えとく。ラン、今日は忙しい中邪魔して悪かったな。星のことも、すげぇー感謝してる」
俺たちが個室で楽しんでいる合間も、ランは仕事に集中していたから。俺が素直に感謝を述べると、スマホ越しのランが笑った。
『珍しいこともあるものね、貴方からそんな言葉が聞けるなんて。気にしなくていいのよ、久しぶりに光ちゃんと優くんに会えたんだもの』
「お前と光が合わさると、クソうるせぇーから俺はイヤだ……ってかさ、ラン、お前アイツらのコト気づいてたりすんの?」
ランには伝わると思い、俺は光と優のことについて言葉を濁して尋ねてみる。
『シークレットラブ、素敵よね。お似合いの二人だと思うわ……でも、それだけ。それに、前にも言ったはずだわ。私はどんなことがあっても雪夜、貴方の味方なのよ』
「お前、どんだけ俺に惚れてんだ」
『ふふ、そうね。貴方こそ、どれだけ惚れさせれば気が済むのかしら。夕焼けに照らされた店内で、雪夜が星ちゃんの唇を奪ったところ……厨房の小窓から、ちゃーんと観させていただきました!!』
「うるせぇー、クソが。俺、お前が覗いてたの知ってっからな。どんだけ豹変したって、オカマの異様な気配は消せねぇーってコトだ」
俺はランにそう告げると通話を強制終了し、煙草を咥えて火を点けた。
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