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第181話

【星side】 ……なんか、すごいよく寝た。 白石さんの抱き枕になってることに気づいたオレは、ランさんのお店からそのままずっと眠り続けていたことを悟る。 今、何時だろう。 部屋が明るいから、夜じゃないことは間違いないけれど。スマホで現在の時刻を確認したくても、白石さんにしっかりホールドされている身体は思うように動かない。 それに、なんだか起こしてしまうのは申し訳ないから。オレは白石さんに抱きしめられたまま、昨日の記憶を手繰り寄せていく。 ランさんのお店で止まっている記憶なのに、オレはどうやってこのベッドまで辿り着いたんだろうって考えた。爆睡していたから、何にも覚えてないけれど。きっと、白石さんがどうにかして運んでくれたんだと思う。 でも。 今はまだ、その事実を確認する術がなくて。 白石さんといると、幸せだなって気持ちが溢れて眠たくなってきちゃうから……だから、えっと、白石さん、ごめんなさい。 そう思ったオレは、心の中で深々と頭を下げた。せっかく、白石さんと一緒にいられる大切な時間だったのに。白石さんが起きたら、ちゃんと謝罪とお礼を言わなきゃって。 そこまで考え、オレは、ランさんにも、兄ちゃんたちにも、何にもお礼ができないままになっていることに気がついた。 兄ちゃんはいいとして、優さんには今度会ったらちゃんとお礼を言おう。ゴールデンウィークは主に優さんにお世話になると思うから、もう一度しっかり挨拶もしておきたかったのに。 横山先生のこと、ランさんにだってちゃんとお礼できてない。忙しい時間の合間を縫って、ランさんはオレのために動いてくれたのに。 まさか、あのまま眠ってしまうなんて。 そしてそのまま、今まで寝続けてしまうなんて……オレが恐る恐る途切れた記憶の最後を覗いてみると、そこには幸せいっぱいで瞳を閉じたオレがいた。 白石さんの肩に凭れて、手の甲を噛ませてもらって。オレの小さな声でも、白石さんには届いたことが嬉しくて。 あの場で寂しく感じていた気持ちを掻き消すみたいに、オレの思考は白石さんで埋め尽くされていたんだ。 そうして、幸せを実感したオレの記憶は今に飛んでいる。昨夜のオレのように、爆睡している白石さんの抱き枕になっている今も、もちろん幸せなんだけれど。 今の時間も不明、帰宅時間も不明だから。 白石さんがいつ寝たのかも分からなくて、どれだけ睡眠が取れているのかもオレには分からない。 分かるのは、白石さんからいい匂いがしてオレの頬が緩んでしまっていることだ。 煙草の匂いって好きじゃないのに、白石さんの匂いが好きなのはどうしてなんだろう。初めて会ったときも、いい匂いだなって思ったし……それは、今も変わらないから。 オレはいつから、白石さんのことをこんなにも好きになっていたんだろうって。オレは、あんなに兄ちゃんが好きだったはずなのに。 スヤスヤと眠る白石さんがスマホのアラームで目覚めるまでずっと、オレはただひたすらに白石さんのことを考えていたんだ。

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